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本よみうり堂

読書委員が選ぶ「震災後」の一冊

書評


評・小泉今日子(女優) 思春期の頃、母親の存在を疎ましく思った。初めて恋をした頃だった。恋するという感情が(うれ)しいような恐ろしいような気がしていて、何かのせいにしたかったのだと思う。自分の中には母親と同じ血が流れていて、だから恋なんかするんだ、全てお母さんのせいなのだと変な理屈で恋心を納得させようとしていた。 (11月28日)[全文へ]


評・河合香織(ノンフィクション作家) ここに描かれているのは、どこにでもある恋愛であり失恋である。中国残留孤児である父の半生を描いた第1作でデビューした著者の4年半ぶりの第2作は、20代に経験した自らの恋についてのノンフィクションだ。つづられる物語は、舞台こそ中国、ラオス、ベトナム、日本をまたぐが、文化や国の違いはそれほど大きな波を起こさず、むしろ普遍的なほどにもどかしい感情に終始する。「恋愛強者」ではない、そんな“普通”の恋を400ページ近い分量で描き切っているところにこの本の価値はある。 (11月28日)[全文へ]


評・野家啓一(科学哲学者・東北大教授) この宇宙には目に見えない数学的秩序が存在する。このように信じているとすれば、私たちはまぎれもなくピュタゴラスの末裔(まつえい)に属する。彼は「音の高さと竪琴(リラ)の振動する弦の長さとの関係」が整数比であることを発見し、そこから「万物には数がある」という信念に到達した。宇宙には星辰(せいしん)が奏でる音楽のハーモニー(数学的調和)が響き渡っているのである。 (11月28日)[全文へ]


評・椹木野衣(美術批評家・多摩美大教授) 本書には、音楽家である著者の手で構成・台本・作曲された同名の作品(二○一一年)が収められている。全体は三十六の断片からなり、カフカが(のこ)したノートブックから取られ、ドイツ語と日本語訳で並記されている。訳は、できるだけ原文の分節に忠実に手を施された。 (11月28日)[全文へ]


評・細谷雄一(国際政治学者・慶応大教授) 日中国交正常化四十周年を前にして、日中関係の緊密化が重要な政治課題となっている。しかしながら両国間の関係はどこかぎこちなく、また国民感情は相互に不信感を示している。いったい問題の本質は何なのだろうか。それを理解する一つの手がかりは、日中関係の「基層」ともいえる近代日本の中国認識の歴史を辿(たど)ることであろう。 (11月28日)[全文へ]


評・前田耕作(アジア文化史家・和光大名誉教授) コンスタンとは一体なにものなのか。ロマン主義文学の先駆シャトーブリアンと同時代の人で、社交界の輝く知性であったスタール夫人の恋人といった方が(わか)りやすいのか、あるいはフランス革命後、ナポレオン・ボナパルトの登場とその反動の霧深き時代のジャーナリストにして事業家、政治家にして宗教思想史家、そしてなにより恋なくしては生きられなかった文人というべきか。 (11月28日)[全文へ]


評・湯本香樹実(作家) 作曲家ジョン・ケージは大のきのこ好きで、イタリアのテレビのクイズ番組に出演、数週間きのこについて答え続けた末、見事五〇〇万リラの賞金を獲得した……! (11月28日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家) 本編を読了し、先日亡くなった土屋隆夫をつい思い出した。彼はミステリーを愛し、だからこそ文章に心を砕き続けた推理作家だった。本編は土屋の作風とは異なるが、謎解きの面白さを備えながらもその実、読後に強く響くのは、全編に(わた)って漂う文学ならではの、抒情(じょじょう)の香りだ。 (11月28日)[全文へ]


評・榧野信治(本社メディア戦略局総務) パブリック・ディプロマシーという言葉をご存じか。 (11月21日)[全文へ]


評・朝吹真理子(作家) 本書を書店で探していると、必ずといっていいほどガイドブックコーナーに置かれてある。 (11月21日)[全文へ]


評・椹木野衣(美術批評家・多摩美大教授) 不世出の天才柔道家、木村政彦の生き死にを追った一冊である。 (11月21日)[全文へ]


評・山内昌之(歴史学者・東京大教授) 中東・北アフリカ(MENA)の長期独裁体制の崩壊が相次ぎ、民主化の行方が注目されている現在、MENAの動向を占う上でいちばん堅実な見方を示す書物が出版された。 (11月21日)[全文へ]


評・三浦佑之(古代文学研究者・立正大教授) 早い時間にどこも人けがなくなって寂しいねえ、先日乗ったタクシーの運転手さんがぼやいていた。 (11月21日)[全文へ]


評・都甲幸治(アメリカ文学者・早稲田大准教授) はたして我々は自分の死に正面から向き合ってきただろうか。 (11月21日)[全文へ]


評・堂目卓生(経済学者・大阪大教授) 大災害の後に残るもの。財産と仕事を失い、避難所や仮設住宅で過ごさなければならない人々。 (11月21日)[全文へ]


評・蜂飼 耳(詩人) いま、改めて思う。久世光彦は見る人、読む人だったのだなと。 (11月21日)[全文へ]


評・河合香織(ノンフィクション作家) 10月に西シベリアで行われた雪男に関する国際会議は、同地で雪男が生息する可能性は95パーセントと発表した。 (11月14日)[全文へ]


評・椹木野衣(美術批評家・多摩美大教授) 幾多のメディアに囲まれて暮らしている以上、著作権ほど我々の生活に密着した問題もないはずだ。 (11月14日)[全文へ]


評・蜂飼 耳(詩人) アウシュヴィッツ強制収容所から生還したイタリアの作家・化学者プリーモ・レーヴィ。本書は、日本ではじめての評伝だ。 (11月14日)[全文へ]


評・松山 巖(評論家・作家) 人を()ったタイトルから、かえって読者は通俗的な人生訓と判断するだろうが、文字通り「出世をしない秘訣(ひけつ)」に徹底して述べる。 (11月14日)[全文へ]

著者来店


 自然を楽しみ地産地消を実践するスローライフ。憧れの生活も、この人にかかると喜劇風になる。〈わかった!! 長生きしたいのね。粗食で寿命が延びることで一日が長く感じられるのが、スローライフの仕組みなんだわ!!〉 (11月29日)[全文へ]

『クートラスの思い出』の岸真理子・モリアさん

草原の風

読売新聞朝刊で連載している中国歴史小説「草原の風」の読書ガイドです。

コラム

HONライン倶楽部


 史上最年少の19歳で芥川賞を受賞した綿矢りささんは、今年早くもデビュー10年を迎えました。若いことの鬱陶(うっとう)しさ、輝かしさを描く作品は、心の奥深い場所に触れてきます。なぜか夏より秋に、静かな喫茶店で読み返したくなるのです。 (11月29日)[全文へ]

綿矢りさ特集

空想書店


 本との接しかたにもそれぞれあろうが、私の場合はその本(小説に限るが)の著者に徹底的にのめり込むタイプだ。 (11月15日)[全文へ]

ポケットに1冊


 ちいさいころ、人さらいが怖かった。 (11月23日)[全文へ]

 

コミック・マガジン

マンガは僕の友達だった


 一コママンガに未来はあるのか。この問いに対する解答は、正直なところ難しい。まず、前々回でも触れたが、その発表のチャンスがあまりにも限られていることが第一の理由。そして、その状況が、日本に限って言えば、ほとんど改善の見込みがないかもしれないというためだ。 (11月24日)[全文へ]

本こども堂

子どもたちへ

大島十二愛(おおしま・そにあ)さん 34 1906年創刊(そうかん)の週刊子ども新聞に関する研究が評価(ひょうか)され、青少年文化の向上に貢献(こうけん)した人に(おく)られる久留島武彦(くるしまたけひこ)文化賞の個人(こじん)賞を受賞。 (11月15日)[全文へ]




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読売文学賞

東日本大震災後の今だからこそ読みたい本20冊を被災3県の学校などに寄贈するプロジェクト

連載・企画

国際ペン東京大会を振り返る
世界の文学者が集い、語らった国際ペン東京大会が30日、8日間の日程を終えた。(10月1日)

連載・企画

異色の師弟 「牧水」語らう
歌人・伊藤一彦 / 俳優・堺雅人(9月10日)

連載・企画

読売新聞連載「あんじゅう」刊行
対談・宮部みゆきさん/南伸坊さん(9月7日)

特集・企画

戦後世代が書く戦争
文芸評論、漫画、ノンフィクションの分野で活躍する3人に聞いた。(8月13日)

読売文学賞

読売文学賞の人びと
第62回受賞者にインタビュー

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