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ドル円方向感なく推移、住宅関連発表に期待

1 概況:ドル円は底堅く推移も、上値重い展開

 先週のドル円相場は77円台後半でオープン。週初12日、オセアニア時間に週安値となる77.56円まで下落するも、前週末の欧州連合(EU)首脳会議に対する海外勢の反応を見極めたいとの見方から、東京時間は動意薄。欧州勢参入後は、EU首脳会議での合意内容に対する複数の米格付け会社のネガティブな見解をきっかけにユーロドルが下落するにつれ、ドル円は一時78.00円まで上昇した。

 13日は、独メルケル首相による欧州安定メカニズム(ESM)の規模拡大を否定する発言や、連邦公開市場委員会(FOMC)声明文において米景気認識が若干上方修正されたことからドル買いが強まった。

 翌14日にはイタリア5年債入札利回りがユーロ導入以来最高となったことやフランス国債格下げの噂に欧州債務懸念が一層高まったことから、ドル円は週高値となる78.16円まで上昇した。

 15日には、スイス中央銀行(SNB)によるユーロスイスフランの下限目標引き上げ観測が一部出ていたものの政策変更はなく、ユーロスイスフラン、ドルスイスフランが下落。このドル売りの流れを受け、ドル円は上値重く推移。スペイン債入札の無難な結果もドル円の下押し材料となったが、その後発表された米経済指標が軒並み良好な結果となり、下値も限定的だった。

 16日は、ユンケルユーログループ長により来週の臨時会合の可能性が示される一方、米格付け会社がイタリアやスペイン等の格付け見通しをネガティブに変更との報道もあり、欧州の強弱まちまちの材料にドル円は方向感を見出せず、77円台後半で越週した。

2 見通し:引き続き欧州懸念背景にドル調達の動き

 前週末のFOMC声明文では、欧州情勢を巡る市場の混乱が米経済の大きな脅威になっているとの認識を示したものの、一部で期待されていた追加量的緩和の議論はなされず、米景気認識については上方修正している。

 足許、米雇用や製造業を中心に改善の兆しが見え始めている中、今週は20日の米11月住宅着工件数や21日の米11月中古住宅販売件数、来週は27日の米10月S&Pケース・シラー住宅価格指数など、注目度の高い米住宅指標の発表が相次ぐ。米景気回復のネックとされる米住宅市況にも底打ち感が出れば、ドル円のサポート要因となろう。

 基本的には、日本の連休や米クリスマス休暇に向け市場参加者が先細る中、積極的なポジションメイクには動きづらいと思われるものの、市場流動性低下による荒っぽい値動きには注意したいところだ。

3 ズバリ:今週の予想レンジ

予想レンジ
77.00円〜79.00円

ゴールド・バブル再来を夢みん

 今年ももう年の瀬。この1年を振り返ると、まさにユーロが売られた年であった。

 一方で、買われたものの一つが、「金」であろう。

 2011年、1トロイオンス1,400ドル近辺で始まった金相場は、欧州債務懸念の高まりによる「質への逃避」や、各国中銀の外貨準備高の多様化に伴うドル離れ等を背景に、1900ドル台まで上昇の一途を辿った。しかし、9月FOMCにおける量的緩和拡大期待の剥落に加え、欧州債務懸念が、重債務国の債券を保有する金融機関の経営不安へと一段と深刻化したことにより、「質への逃避」が次なる段階、すなわち金より現金を志向する動きに伴い、金相場は1500ドル台半ばまで大きく調整している。

 欧州債務問題発生当初こそ、一部のユーロ周辺国の財政破綻という一国家の問題であったが、徐々に欧州金融機関を巻き込むユーロ圏全体の債務問題へと波及し、今や金融システムを広く巻き込んだ信用不安に拡大している。欧州債務問題の長期化により、株などリスク資産を選好する地合いへの回復には時間がかかると思われるものの、欧州発の極度の金融システム不安さえ後退すれば、金から、現金すなわちドルへと逃避していた資金が逆流し、金相場は再び上昇トレンド入りするものとみる。

 金相場上昇のきっかけとしては、欧州金融機関の経営不安を取り除く資金面での安全網を強化することが不可欠だろう。先日のEU首脳会議での合意内容についての米格付け会社の見解は、総じてネガティブとあり、速効性ある施策へのニーズが一段と高まっている。市場の不安を緩和するためには、まず、EU首脳会議での合意事項である財政規律の強化やESMの前倒し、欧州各中銀による国際通貨基金(IMF)への拠出についての詳細を詰め、重債務国の債券を大量に抱える欧州金融機関の自己資本増強まで早急に実行に移すことが重要だ。

 来年2月から始まるイタリアやギリシャの国債大量償還まで残された時間はあとわずか。ユーロ圏15か国及び欧州金融安定基金(EFSF)債の格下げ懸念など、ユーロの不安材料には事欠かない状況の中、今はかたくなに「最後の貸し手」として国債購入の役割を拒否する欧州中央銀行(ECB)も、債務国の国債価格を下支えにひと役買う必要があるのではないか。仮にECBが重い腰を上げるとすれば、極度の金融システム不安は後退し、足許現金に逃避し利回りの稼げない資金が、今年前半のデジャブのように金へと流れ、不景気の中のゴールド・バブルとも言うべき事象が見られるかもしれない。

 ※ドル円相場は、みずほコーポレート銀行の取引によるものです。

プロフィール
江頭 朋美  (えがしら・ともみ)
みずほコーポレート銀行 国際為替部


みずほコーポレート銀行国際為替部の為替ディーラーが執筆を担当します。(「先週」「今週」などの表記は、執筆日を基準にしています)
2011年12月19日  読売新聞)

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