ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
本文です

排ガス浄化 新ディーゼル

 ディーゼルエンジン車が再び注目されている。かつては「黒煙をまき散らす」といったマイナスのイメージが強かったが、排ガスをガソリン車並みに浄化する「クリーンディーゼル」の開発が進み、国内自動車各社は「低公害で環境に優しい車」に生まれ変わったディーゼル車を順次投入する計画だ。(小谷野太郎)


「低燃費でエコ」各社投入計画

日産が先陣

写真

すす99%除去を実現したエクストレイル20GT

 国内勢の先陣を切って日産自動車は9月18日、仏ルノーと共同開発したディーゼルエンジンを搭載したSUV(スポーツ用多目的車)「エクストレイル20GT」を発売した。日産がディーゼル車を出すのは、2002年11月に販売を終えた「テラノレグラス」以来だ。当初予定していた10年からの販売を2年前倒しした。09年に施行される新たな排ガス規制「ポスト新長期」に対応した国内初のモデルでもある。

 2リットルのディーゼルターボエンジンは、時速100キロの到達まで9・5秒と同出力のガソリン車を約0・5秒上回り、「高速道路に進入する際、ディーゼル車ならではのスムーズな加速を実感できる」(チーフエンジニアの小林毅・車両開発主管)という。

 燃料噴射を電子制御して、燃焼効率を高めて黒煙の発生を抑え、高性能フィルターで、すす(粒子状物質=PM)を99%以上除去するなど、最先端の環境対応技術を盛り込んだ。

一時はほぼ消滅

写真

日産がルノーと共同開発したクリーンディーゼルエンジン「M9R」

 ディーゼル車は従来、「ガタガタ振動する」「エンジン音がうるさい」と思われ、NOx(窒素酸化物)やPMが多く、「排ガスが汚い」とのイメージが定着して敬遠され、日本勢は00年前後に生産・販売から相次ぎ撤退。国内市場では1990年代前半に新車販売台数の約15%を占めたが、07年には、わずかに4164台(0・14%)まで落ち込んだ。

 一度は国内で消滅しかけたディーゼル車が見直されたのは、その燃費の良さだ。一般的にディーゼル車の燃費は同じ排気量のガソリン車に比べ2〜3割良いとされ、その分地球温暖化の一因とされるCO2(二酸化炭素)排出量も減る。長距離移動が多い欧州では特に人気があり、07年の新車販売に占めるディーゼル車比率は53・6%に達する。

 販売実績で独ダイムラーなど海外メーカーに先行を許してきた日本勢だが、「ハイブリッド車や電気自動車と並び、環境対応車の一つの選択肢になる」(日産の志賀俊之・最高執行責任者=COO)との期待が高まっている。ホンダは09年に米市場で新型ディーゼルエンジン車を発売後、日本でも販売する。マツダは11年以降、トヨタ自動車も12年ごろにいすゞ自動車と共同開発中のクリーンディーゼル車を投入する計画だ。

課題

写真

排気口に当てたタオルをかざし、排ガスのクリーンさをアピールする日産の志賀COO

 ただ、排ガスを浄化する触媒に使うレアメタル(希少金属)などの環境対応コストがかさみ、車両本体価格がガソリンエンジンに比べ、高くなる。日産のエクストレイル20GTも、ほぼ同じ排気量のガソリン車より約45万円高い299万9850円(消費税込み)。一時の原油高が一服し、「軽油はガソリンより安い」という燃料代の割安感を実感できないと、ユーザーの購入意欲がメーカーの期待ほどは盛り上がらない可能性がある。




(2008年10月2日  読売新聞)

掲載