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走りに磨き 着実に進化

ワゴンR 全面改良

 スズキの軽乗用車「ワゴンR」が、5年連続で国内軽自動車販売台数ナンバー1を守ったまま、全面改良された。4代目となる新型は、先代の良さを引き継ぎながらも「走り」「室内」「安全性」の三つの要素を向上、これまでの魅力をそのままに、さらに進化させた。(愛敬珠樹)


よりスポーティーに

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ヘッドランプが上につり上がった最近流行の「つり目」になり、全体的に先代よりもスポーティーでシャープな雰囲気になった(スズキ提供)

 「ワゴンRのアイデンティティーを大切にしながら、すべてを新しく生まれ変わらせた」と開発責任者の大西伊知郎チーフエンジニアが語る新型は、ワゴンRの最大の魅力である「広い室内空間」や「取り回しやすさ」などを受け継ぎながらも、様々な性能を進化させたという印象だ。

 外観は、一目で「ワゴンR」とわかる基本スタイルを踏襲しつつも、ボディー全体がやや前面に傾斜し、走りの進化を想像させるスポーティーな印象に変わった。一方で、ボンネットなどにやや丸みを持たせて、前面グリルをメタリック塗装するなどして、親しみやすさと高級感も演出、世代・性別を問わず好まれるスタイルを目指した。

安全性能向上

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広くなった室内。後席は床の中央の出っ張りをなくしてほぼ平面にしたことで、左右の移動もしやすくなり、開放感が高まった(スズキ提供)

 走りは、車台(プラットホーム)を一新、走行安定性と室内の静粛性を高めた。前輪と後輪の軸の間の距離である「ホイールベース」を4センチ広げ、走行安定性を高める一方で、室内空間も拡大した。前後席の間隔は14センチ広がり、後席は、大柄の男性2人でも、ゆったり座れる空間を確保した。

 改良型のエンジンは低速域での加速力を高めた。ターボ仕様車は、ほぼすべての速度域でアクセルを踏めば伸びやかに加速していく。軽でありながら長距離の高速ドライブも安心という印象だ。一方、ノーマルエンジン車も、停止・発進の多い街乗りなら十分な加速感があり、ストレスを感じることは少ない。

 新型のもう一つの魅力が、安全性能の向上だ。乗員や歩行者保護の衝突安全性を高める一方で、一部グレードでは、軽では初となるタイヤの空気が減ると警告灯が点灯する「空気圧警報システム」や、夜間に方向指示器やハンドルを切った方向を照らす補助灯「コーナリングランプ」を用意した。

激戦区「背高系」軽ワゴン

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写真は各社提供


 ガソリン価格の高値が続く中、ワゴンRが属する全高が1・6〜1・7メートル級の「背高系」の軽ワゴン乗用車の分野は、「税金などの維持費が安い」「室内が広く収納性が高い」ことから、急速に人気が高まっている。

 他メーカーからもここ1年の間に新車の投入が相次ぎ、最も競争が激化している激戦区となっている。

 目立つ動きが、スズキの最大のライバルであるダイハツ工業だ。昨年末に全面改良された1・7メートル超の背高ワゴン「タント」が、堅調に販売台数を伸ばしているほか、ここ数年ワゴンRと軽ナンバー1の座を争ってきた「ムーヴ」も、新モデル「コンテ」を投入して、9月にはワゴンRを抜いて首位の座を奪い取った。

 三菱自動車も9月に、「トッポBJ」の後継車として背高ワゴン「トッポ」を復活させた。ホンダも軽自動車の主力モデル「ライフ」を、年内の全面改良で全高を高めて背高ワゴンにすると予想されている。

 新型でワゴンRの商品価値は高まったと言えるが、こうしたライバル車たちとの厳しい競争の中で、軽ナンバー1の地位を守るのは容易ではなさそうだ。

(2008年10月16日  読売新聞)

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