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ポケットに1冊


 日記には人には知られたくない怒り、(かな)しみがつづられる。 (11月16日)[全文へ]


 〈奥さんというものはだらしのない、詰らない人間の代名詞〉と断じ、せっけんという音からは、〈喫茶店の手洗いにおいてある、薄黒い亀裂(ひび)の入った〉石鹸(せっけん)を連想する。そして、〈気が利いてものの(わか)った〉戦前の町のお内儀(かみ)さんの粋さを買い、自分の幼い体を洗った競馬石鹸というシャボンの追憶の香りを()でる。 (11月9日)[全文へ]


 24日朝、84歳で死去した作家の北杜夫さんは、その前日に入院した病院で、大学生の孫に「元気でね」と繰り返すなど、いつも通り家族思いだったという。 (11月2日)[全文へ]


 文芸評論家の小林秀雄(1902〜83)の著作は、若い頃は背伸びをしてでも読まなければならない本の代表格であり、難解さも突出していた。『考えるヒント』など、とことん考え抜く文章は刺激的だったが、一読二読しても理解できない批評もあった。 (10月19日)[全文へ]


 「この額の三日月が目に入らぬか!」――。市川右太衛門、北大路欣也の名演でおなじみの旗本退屈男が帰ってきた。 (10月12日)[全文へ]


 二十歳の時、肺を患い、肋骨(ろっこつ)を5本切除した吉村昭さん(1927〜2006)にとって「命」は大きなテーマだった。 (10月5日)[全文へ]


 作家の有吉佐和子(1931〜84)は、自らをハストリアンと称した。彼の歴史(his+story)のヒストリーではなく、彼女の歴史(her+story)としてのハストリー。 (9月21日)[全文へ]


 「飢えた子の前で、文学は可能か」。哲学者サルトルはかつて、この問いを出した。もちろん文学は、飢えた子の腹は満たさない。でも、物語には心を満たす力がある。 (9月14日)[全文へ]


 「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の詩で知られる室生犀星(1889〜1962)が静かなブームだ。 (9月7日)[全文へ]


 名画を鑑賞しながら、その値段に思いをはせ、ため息をつくことはあったが、動物園で、生き物の値段を想像したことはなかった。 (8月24日)[全文へ]


 生きるか死ぬかという極限状況に人間を追いやり、人間性を奪う戦場は恐ろしい。しかし、戦争の恐怖は戦場にのみあるのではない。 (8月17日)[全文へ]


 満月が光跡を残す竹富島のコンドイ浜、夕日に映える壱岐島の湯本湾、加計呂麻島の芝漁港にかかる朝の虹……。土門拳賞の写真家が、45年余りで訪れた73の日本の島から、印象的な20島を写真と文で振り返る。美しい写真が旅情をかきたてる。 (8月10日)[全文へ]


 寺田寅彦(1878〜1935)が漱石門下の友人、小宮豊隆に送った関東大震災の「絵はがき」のカラー図版十葉を収めた本書を読み、あの言葉を思い出す。 (8月3日)[全文へ]


 「眼中の人」とは、つねに眼中にあって忘れられない人のことである。菊池寛、芥川龍之介の知遇を得て、文学に開眼してゆく経緯を書いた『眼中の人』(岩波文庫)の著者である作家、小島政二郎(1894〜1994)が、つねに心の中にあって忘れられない食について語ったのが、この随想集だ。 (7月20日)[全文へ]


 〈()に働けば(かど)が立つ。情に(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角(とかく)に人の世は住みにくい〉。漱石著『草枕』のこの名文句の続きをご存じだろうか? (7月13日)[全文へ]


 大正12年(1923)の関東大震災で、死者が集中したのは避難所だった。 (7月6日)[全文へ]


 「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」というと、学生時代、授業でやった、ぐらいの印象の方も多いだろう。平安末期、貴族間に流行した今様など雑芸の歌を集成した、と説明されてもピンと来ない。それで卒業すると忘れてしまう。 (6月22日)[全文へ]


 テレビ朝日系「パネルクイズ アタック25」の名物司会者であった児玉清さんは知的紳士だった。しかし、この本についてのコラム集を読むと印象が変わる。「き」がつくほどの活字中毒者で、本の世界の〈比類なき水先案内人〉(作家佐伯泰英さんの言葉)なのである。 (6月15日)[全文へ]


 具象彫刻の第一人者の佐藤忠良と画家・絵本作家の安野光雅の語らいには、ざっくばらんな雰囲気の中に、背筋が伸びる鮮烈な言葉が並ぶ。 (6月8日)[全文へ]


 おそろしい小説である。人が生まれては死んでいく無慈悲な反復を、無慈悲なまでに律義に描く農民一家の物語だ。 (5月18日)[全文へ]




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東日本大震災後の今だからこそ読みたい本20冊を被災3県の学校などに寄贈するプロジェクト

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第62回受賞者にインタビュー

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