ポケットに1冊
〈奥さんというものはだらしのない、詰らない人間の代名詞〉と断じ、せっけんという音からは、〈喫茶店の手洗いにおいてある、薄黒い
24日朝、84歳で死去した作家の北杜夫さんは、その前日に入院した病院で、大学生の孫に「元気でね」と繰り返すなど、いつも通り家族思いだったという。 (11月2日)[全文へ]
文芸評論家の小林秀雄(1902〜83)の著作は、若い頃は背伸びをしてでも読まなければならない本の代表格であり、難解さも突出していた。『考えるヒント』など、とことん考え抜く文章は刺激的だったが、一読二読しても理解できない批評もあった。 (10月19日)[全文へ]
作家の有吉佐和子(1931〜84)は、自らをハストリアンと称した。彼の歴史(his+story)のヒストリーではなく、彼女の歴史(her+story)としてのハストリー。 (9月21日)[全文へ]
「飢えた子の前で、文学は可能か」。哲学者サルトルはかつて、この問いを出した。もちろん文学は、飢えた子の腹は満たさない。でも、物語には心を満たす力がある。 (9月14日)[全文へ]
満月が光跡を残す竹富島のコンドイ浜、夕日に映える壱岐島の湯本湾、加計呂麻島の芝漁港にかかる朝の虹……。土門拳賞の写真家が、45年余りで訪れた73の日本の島から、印象的な20島を写真と文で振り返る。美しい写真が旅情をかきたてる。 (8月10日)[全文へ]
寺田寅彦(1878〜1935)が漱石門下の友人、小宮豊隆に送った関東大震災の「絵はがき」のカラー図版十葉を収めた本書を読み、あの言葉を思い出す。 (8月3日)[全文へ]
「眼中の人」とは、つねに眼中にあって忘れられない人のことである。菊池寛、芥川龍之介の知遇を得て、文学に開眼してゆく経緯を書いた『眼中の人』(岩波文庫)の著者である作家、小島政二郎(1894〜1994)が、つねに心の中にあって忘れられない食について語ったのが、この随想集だ。 (7月20日)[全文へ]
「
テレビ朝日系「パネルクイズ アタック25」の名物司会者であった児玉清さんは知的紳士だった。しかし、この本についてのコラム集を読むと印象が変わる。「き」がつくほどの活字中毒者で、本の世界の〈比類なき水先案内人〉(作家佐伯泰英さんの言葉)なのである。 (6月15日)[全文へ]
具象彫刻の第一人者の佐藤忠良と画家・絵本作家の安野光雅の語らいには、ざっくばらんな雰囲気の中に、背筋が伸びる鮮烈な言葉が並ぶ。 (6月8日)[全文へ]
- 『百代の過客』 ドナルド・キーン著 (11月16日)
- 『魔利のひとりごと』 森茉莉著 (11月9日)
- 『マンボウ家族航海記』 北杜夫著 (11月2日)
- 『兄 小林秀雄との対話』 高見沢潤子著 (10月19日)
- 『旗本退屈男』 佐々木味津三著 (10月12日)
- 『光る壁画』 吉村昭著 (10月5日)
- 『青い壺』 有吉佐和子著 (9月21日)
- 『まゆみのマーチ 自選短編集・女子編』 重松清著 (9月14日)
- 『天馬の脚』 室生犀星著 (9月7日)
- 『動物の値段』 白輪剛史著 (8月24日)
- 『戦争童話集』 今江祥智著 (8月17日)
- 『ぶらりニッポンの島旅』 管洋志著 (8月10日)
- 『地震雑感/津浪と人間』 寺田寅彦随筆選集 (8月3日)
- 『食いしん坊』 小島政二郎著 (7月20日)
- 『神様のカルテ』 夏川草介著 (7月13日)
- 『流言蜚語』 清水幾太郎著 (7月6日)
- 『梁塵秘抄』 後白河法皇編纂 川村湊訳 (6月22日)
- 『寝ても覚めても本の虫』 児玉清著 (6月15日)
- 『若き芸術家たちへ ねがいは「普通」』 佐藤忠良・安野光雅著 (6月8日)
- 『笛吹川』 深沢七郎著 (5月18日)
- 『身近な雑草の愉快な生きかた』 稲垣栄洋著/三上修画 (5月11日)
- 『随感録』 浜口雄幸著 (5月4日)
- 『カンディード』 ヴォルテール著 (4月20日)
- 『円谷英二の言葉』 右田昌万著 (4月13日)
- 『へっぽこ先生その他』 永井龍男著 (3月25日)
- 『木魂 毛小棒大 里見トン短篇選集』 小谷野敦編 (3月9日)
- 『ダブル・プロット』 岡嶋二人著 (2月23日)
- 『棟梁 技を伝え、人を育てる』 小川三夫著 (2月16日)
- 『怪奇小説という題名の怪奇小説』 都筑道夫著 (2月9日)
- 『とっておき名短篇』 北村薫・宮部みゆき編 (1月26日)
- 『わたしの渡世日記』 高峰秀子著 (1月19日)
- 『センセイの書斎』 内澤旬子著 (1月12日)
- 『買えない味』 平松洋子著 (12月22日)
- 『魔法のことば』 星野道夫著 (12月15日)
- 『ゴヤ1 スペイン・光と影』 堀田善衞著 (12月8日)
- 『春駒日記 吉原花魁の日々』 森光子著 (11月24日)