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ホームレスの自立支援

水越洋子さん(ビッグイシュー日本版編集長)

「今回はアートっぽくしたいね」12月15日発売号について、事務所で打ち合わせをする水越さん(中央)(大阪市北区で)=関口寛人撮影

 11月末、大阪市北区の事務所のドアを開けると、7、8人の男性がわいわいとテーブルを囲んでいた。

 ホームレスの生活自立を目指す雑誌「ビッグイシュー日本版」は毎月1日と15日の販売で、その前日、販売者らが雑誌の仕入れに訪れていたのだ。「こんにちは」。部屋の奥から、編集長の水越洋子さん(57)が現れた。

 街角で、色鮮やかな雑誌を掲げて売る人がいる。あの雑誌がビッグイシューだ。ホームレスが販売し、1冊300円のうち160円を収入として、アパート入居から就職につなげる。現在、大阪や東京、愛知など約150か所で販売する。

 編集部は朝10時出社が基本だが、デザイナーらとの打ち合わせ、自らの取材などで帰宅は遅い。家でも原稿を書き、休日もほとんどなく動き回る。東日本大震災後は、関連団体ビッグイシュー基金主催の被災地イベントにも足を運んだ。

 2002年、ホームレス問題を調べ、炊き出しや毛布の配布、夜回りだけでなく自立支援が必要と考えていた時、英国で販売されていたビッグイシューに出会った。翌03年、海外の同様な雑誌と一部記事を配信し合う形で日本版を創刊。佐野章二氏と共に発行所の共同代表も務める。

 誇りを持って売るためにと、雑誌の表紙やインタビューにはダライ・ラマ14世、エアロスミス、レディー・ガガら国内外の有名人が登場。社会の中心でなく「周縁」にいる人々の視点から、薬物中毒やひきこもりなど社会問題の記事が多い。「今の状況を抜け出そうと、自分を人間として磨く姿勢には学べることは多い」。「今月の人」として販売者も紹介。これまで約1280人が売り、約150人が就職へと旅立った。

 震災後、被災地リポートを必ず載せてきた。この先の展開に頭を悩ますが、重い話題を扱ってもうちひしがれずにやってきた同誌だからこそ、伝えられることもあるはずだ。「誌面に希望の種をまきたい」と、今日も走り回る。(京極理恵)

◇空き時間 気分転換に書店巡り

 月2回発行する雑誌の編集長という仕事柄、「仕事の中に時間がある」という状況だからこそ、気分転換が欠かせない。

 時間を見つけて散歩し、緑や水をひたすら見て何も考えないひとときを大切にしている。

 仕事の合間によくするのが、書店巡り=写真=。仕事関係の本も買うが、プライベートでは洋裁、料理、インテリア、旅、ガーデニングなど、できるだけ発想を変えられるものを選ぶ。

 50歳を過ぎてから、休日に、ぬるめのお風呂で1時間ほどつかりながら本を読むことも多い。シャワー派で温泉も嫌いなくらいだったが、人に勧められてやってみたら、結構疲れがとれる。海外の軽いミステリーで頭を空っぽにするのが快感だ。

お気に入りの色鉛筆。ノートの書き込みもわかりやすく色分け
枝元さんらが作ってみんなで食べた「白菜と豚バラ肉のにんにくみそ鍋」

 
【月曜】
午前、翌日発売の「ビッグイシュー179号」を取材先や関係者に一言お礼を添えて発送。午後、取材アポイントの確認連絡など

【火曜】
179号発売日、181号原稿締め切り日。夕方、編集部スタッフと180号再校ゲラ打ち合わせ

【水曜】
午後、兵庫県西宮市で182号の特集取材。夕方、180号再校ゲラ修正作業

【木曜】
終日、180号、181号、182号の進行などチェック

【金曜】
朝、仙台へ。午前、NPO法人を訪問。午後、翌日のビッグイシュー基金被災地プロジェクトの準備

【土曜】
朝から、東日本大震災の被災地・宮城県亘理町で、ビッグイシュー基金プロジェクト。料理研究家の枝元なほみさん、地元の親子、ビッグイシュー販売者や基金のボランティア・スタッフらが料理して、地域の人と会食。ビッグイシュー取材班が特集用に取材。夕方、東京へ

【日曜】
午後、東京でビッグイシュー基金理事会、ミーティング。夜、大阪へ

みずこし・ようこ
 1954年、奈良県生まれ。高校を卒業し奈良県庁に勤務後、日本福祉大学女子短期学部(当時)に入学。保育所勤務後、地域調査計画研究所で約20年働く。NPOシチズン・ワークス事務局長を経て、2003年9月から現職。
2011年12月20日  読売新聞)

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