熱く駆ける
男子大学生の陸上長距離は、今月9〜11日に熊本市であった日本学生対校選手権(日本インカレ)でトラックシーズンがほぼ終了。秋の深まりとともに、駅伝シーズンが幕を開ける。最大の山場となる来年1月2、3日の第88回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝=読売新聞社共催)で主役となりそうな選手たちを、今季のトラックでの成績をもとに紹介する。
大迫傑(早大2年)…ユニバ「金」速さに磨き
前回の箱根駅伝では1区で区間賞を獲得し、総合優勝への流れを作った。今季のトラックでは大きなタイトルを手に入れた。8月に中国・深センで行われた学生スポーツの祭典、ユニバーシアードの1万メートルで金メダルを獲得。「勝てたことは自信になった」と、収穫を持って帰国した。
自分のレース以外からも、得るものは大きかった。「5000メートルや1500メートルのレベルが高いレースを見て、スピードが大事だなと実感した。もっとスピードを強化していかないと、今後は1万メートルでも相手にされなくなってしまう」
9月の日本インカレでは1500メートルと5000メートルに出場し、スピードに磨きをかけた。1500メートルでは中距離専門の選手をラストスパートで逆転して優勝し、「ラストでしっかり動けたので良かった」と納得の表情を見せた。
9月までトラック中心で活動してきたため、昨季に比べれば、夏合宿などでの走り込みの量は不足している。それでも、「出雲、全日本と徐々に距離が延びていくので、問題はないと思う。箱根駅伝で勝つことが目標なので、そこにしっかり合わせていきたい」と言いきった。
昨季は、出雲、全日本、箱根の大学3大駅伝で3冠を達成した早大。その全てで連覇を狙うチームを、2年生エースが抜群のスピードで勢いづける。
村沢明伸(東海大3年)…向上心 世界見据え
前回の箱根駅伝では2区の快走で最優秀選手(金栗杯)に選ばれた。今季の活躍は、既に学生のレベルを超えている。
6月の日本選手権1万メートルでは、長野・佐久長聖高、東海大の先輩でもある佐藤悠基(日清食品グループ)とデッドヒートを繰り広げ、惜しくも敗れて2位。「ずっと追い続けている先輩なので、ここで勝負できたことはうれしかった。でも、終わった後、勝負するだけでは物足りないと思った」とレースを振り返った。
7月のアジア選手権代表に選ばれ、1万メートルで銅メダルを獲得。ただ、バーレーン選手に金、銀を独占され、「もっと何かできたんじゃないか。そういう意味では悔しい」と不満を口にした。
はた目から見れば健闘と言える結果でも、めったに満足しないのが村沢らしい。今季から高校時代の恩師である両角速(もろずみはやし)監督が東海大に着任。自らをよく知る指揮官の下で、世界に目を向けて強化に取り組んでいる。
柏原竜二(東洋大4年)…ロードで力を発揮
箱根駅伝で3年連続5区区間賞の柏原竜二(東洋大4年)は、関東学生対校選手権1万メートルで3位、日本選手権1万メートルで24位。トラックでは際だった成績を残していないが、8月7日に十和田八幡平駅伝の5区(14・1キロ)で49分1秒の区間新記録を樹立するなど、起伏のあるロードでは力を発揮する。福島県いわき市出身の柏原にとっては、東日本大震災もあって特別なシーズンとなる。「僕にできることは本当に微々たるものかもしれないが、東北に元気を送れるような走りをしていきたい」と意気込む。
鎧坂(よろいざか)哲哉(明大4年)は7月29日に英バーミンガムで行われた英国トライアルの1万メートルで27分44秒30をマークし、ロンドン五輪の参加標準記録A(27分45秒00)を突破。欧州遠征で世界の舞台への足がかりを築いた。
日本インカレでは、ケニアからの留学生、ガンドゥ・ベンジャミン(日大3年)が1万メートルで優勝し、地力の差を見せつけた。一方、その大会で5000メートルを制した村山謙太(駒大1年)は楽しみなルーキーだ。宮城・明成高出身の村山は、前日に1500メートルを制した大迫らをラストスパートで振りきり、侮れないスピードを見せつけた。
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