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皇太子さま51歳 誕生日会見の詳報(1)


愛犬の「由莉」、愛猫とともにほほ笑まれる皇太子ご一家(2月13日、東宮御所で)=宮内庁提供

「タイガーマスク 心温まる」

 皇太子さまは23日に51歳の誕生日を迎え、これに先立って記者会見された。

 この1年を振り返る質問では、若者の就職難に「心が痛みます」とした上で海外留学の減少などに触れ、「若い世代に『内向き志向』が強まっていることも心配です」「外から日本を眺めることも大切」などと語られた。またタイガーマスクの主人公らを名乗る善意のプレゼントが広がったことを心温まるニュースに挙げられた。高齢になられた天皇、皇后両陛下を案じ、「皇太子としてお助けしなければならない」としつつ、公務のあり方の検討は「天皇陛下のお気持ちに沿って進めるべき」と述べられた。

「良い方向」愛子さま

 皇太子さまは会見で、学校生活への不安から雅子さまに付き添われての登校が1年近く続いている長女、愛子さま(9)(学習院初等科3年)について、「学校で過ごす時間も長くなり、行事にも元気に参加するなど、良い方向に向かっている」と話された。

 関係者によると、愛子さまの出席は当初3、4時限目の授業だけが多かったが、2学期以降は運動会など行事にも参加、2〜6時限目に出席する日が増えた。雅子さまが参観されない授業も増えたが、付き添いは続いている。学習院の東園基政・常務理事は、雅子さまと学校側が必要に応じて連絡を取っているとしたうえで「信頼関係は深まっており、対応を続ける」と話している。

(2011年2月23日付朝刊掲載記事)

 ――問1 この1年、国内では「消えた高齢者」問題など、暗い世相を反映した社会問題や事件があった一方で、全国の児童施設に「タイガーマスク」の主人公を名乗る人たちから善意のプレゼントが相次ぐなど、人の温かさを感じさせるニュースもありました。この1年を振り返り、殿下の印象に残った社会の出来事と、ご自身の50代最初の年がどのような年だったかお聞かせください。また、天皇、皇后両陛下のご意向で英国のウィリアム王子の結婚式へのご夫妻での出席が検討されているとのことですが、訪英についてのお考えもあわせてお聞かせください。

ご回答

殿下 この1年を振り返りますと、日本では、昨年の夏、各地で猛暑が続き、逆に冬には厳しい寒さと雪害に見舞われ、それに加えて、年明けからは、九州、霧島連山の新燃岳(しんもえだけ)の噴火などがあり、自然災害が後を絶っておりません。また、海外でも、年末から1月にかけ、ブラジルやオーストラリアなどで大規模な洪水に伴う被害が発生しています。このような、(くに)内外でのさまざまな災害で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りし、また、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

 さらに、宮崎県で発生した口蹄疫(こうていえき)や、各地で発生した鳥インフルエンザによって大切に育ててきた家畜を処分せざるを得なかった方々の悲しみや、そのための作業に従事された方々の労苦にも思いを致しております。

 国際社会においては、北東アジアにおける情勢や年末から今年に入ってからの中東地域での一連の動きなど、不安定で先行きが不透明な状況にあります。経済面でも、依然として厳しい状況が続いており、日本においても、特に若い人たちが就職難に直面していることには心が痛みます。こうしたことも影響してか、日本から海外へ留学する若者の数が減少するなど、若い世代に「内向き志向」が強まっていることも心配です。現在は、インターネットの発達で、世界のさまざまなことが、その場所に行かなくても分かるようになってきましたが、世界のさまざまな場所に実際に自分たちで行って、自分たちの目で見て、そして肌で感じ、さまざまな経験を積むことは何物にも代え難いものと思います。また、若い人たちが一度、外から日本を眺めることも大切なことなのではないでしょうか。そうすることによって、今まで気が付かなかった日本の姿が分かってくるように思います。私自身、英国に留学した際に経験したさまざまな事柄が、今日の私の貴重な財産となっており、若い世代の皆さんには、世界のさまざまなことに関心を向け、広く世界に羽ばたいていただきたいと思います。

 高齢者については、ご質問にもありましたとおり、昨年、所在不明問題が大きく取り上げられたこと、また、猛暑の中で熱中症で多くの方々が亡くなられたことなどが強く印象に残っております。ご高齢の方々が健やかに、安心して暮らせる社会づくりが望まれます。

 このような、心配事が多い中で、昨年末から今年に入って、 「タイガーマスク」の主人公を名のる人からの善意のプレゼントが全国各地で相次いだことは、一つの善意の表れでありますし、昨年のチリ鉱山での落盤事故における統率の取れた救出への動きなどと共に、心温まるニュースでありました。これらの出来事を通じて、人と人とのつながりが大事であり、お互いを思いやる心が大切であることを改めて感じました。今後とも、困難な状況にある国民の皆様に思いを寄せてまいりたいと思います。

 私自身のこの1年間の公の活動の中では、昨年3月のガーナ国及びケニア国への訪問が印象に残っています。私にとって、サハラ砂漠以南の初めての「サブサハラ」のアフリカへの訪問となりましたが、アフリカには現在さまざまな課題があることを感じた一方で、アフリカには、今後大きな可能性があるようにも思えてなりませんでした。と同時に、アフリカの人々の日本に対する熱い眼差(まなざ)しもとても印象的でした。野口英世博士が取り組まれた黄熱病の研究を含む仕事は、現在でも、現地で医療活動に当たっておられる方々や青年海外協力隊を始めとする皆さんが引き継いでおられることを知って、大変意を強くしました。また、アフリカのような乾燥地帯にあって、少ない水で栽培できる「ネリカ」と呼ばれる品種の米の普及や灌漑(かんがい)施設の整備に日本人が深く関わっている現場も視察し、うれしく思いました。

 会見の冒頭、私は、自然災害のことをお話ししましたが、この1年、自然災害の脅威や、災害後の復興において抱えるさまざまな問題について耳にするにつけ、水の問題への世界的な取り組みが大切であることを改めて感じることが多くありました。昨年12月まで続いた国連の「水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁の任期も、国連事務総長からの要請により、来年末まで延長となりました。私としては、これからもこの問題に関して知見を深め、世界の水をめぐるさまざまな問題が良い方向に向かっていくように、私の立場でできる限り、お役に立ちたいと思っております。

 50代最初の年となった昨年のこの場において、私は、天皇陛下のお言葉を引用しつつ、過去の天皇が歩んでこられた道と、そしてまた、天皇は日本国、そして国民統合の象徴であるとの日本国憲法の規定に思いを致して、国民と苦楽を共にしながら、国民の幸せを願い、象徴とはどうあるべきか、その望ましい在り方を求め続けたいとお話を致しました。いまだ道半ばであり、両陛下のなさりようを拝見しつつ、引き続き研(さん)を積んでまいりたいと思います。

 最後に、英国ウィリアム王子のご結婚式への招待については、いまだ英国王室からの招待状が届いておりませんので、今の段階で私の方からお話しすることは控えたいと思います。招待状を頂きました際には、まず政府内部で検討がなされるものと思います。

2011年2月23日  読売新聞)
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