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(13)「経営者が来ない職場」のメリット

 出産直前からほとんど出社しなくなり、10月に入って正式に育休に入った。育休といっても、法的な育児休業は従業員のもので、経営者には法的な規定があるわけではない。実際に、育休を取る経営者は日本広しといえども、ほとんどいない。なので、僕は「経営者の育休」という未開拓な土地に、新しい地図を描いていかないといけないのだった。

 普通にお勤めの方と違い、経営における全責任は、経営者たる僕が担っている。「病児保育」は子どもの命を預かる仕事でもあるので、その責任は計り知れない。80人程度の中小企業だが、従業員の生活もかかっている。こうした状況において、会社と全く音信不通になる、というのは現実的ではない。

 そこで、自分の仕事の90%を部下たちに割り振り、重要な意思決定のみ在宅で行う、という手法を試してみた。9つあった定例会議への参加を3つに減らし、しかも在宅から電話会議ソフトを立ち上げて必要な部分だけ遠隔部分参加。

 メールも、今までは関連するプロジェクトのメーリングリストを全て見ていたが、個人あてのもののみ見ることにして、実際に返すのはさらにそのうちのいくつか、というようにした。

 当初は自分がいなくて回るかが大変不安であった。だが、2週間近くたっても何も変わらず職場は機能している。そしてふと考えた。とすると、今までの自分の90%の仕事は、何だったのだろうか、と。

 おそらく「過剰管理」であったのだろう。もっと社員一人一人を信頼して、もっと任せていたら、自分は本当に重要なことのみに集中できていたのかもしれない。

 それで失っていた機会はいかほどだろうか。計り知れない。

 さらにうれしい成果が出始めていた。

 在宅から会議に部分参加していた時に、これまで僕の指示を仰いで動いていた管理職達が、「とりあえず、このトラブルに関しては、これとこれとこういう対策をすでに打っていますので、ご安心を」

 何も言われなくても動いていてくれていた。

 つまり、僕がいないことで、より責任感を持ち、成長してくれていたのだった。

 これはいいことづくめではなかろうか・・・。いいぞ、経営者の育休。これはイケるかも。

 そんな風にルンルンしていた矢先に、職場を大きく揺さぶるようなことが起こったのだった。

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駒崎 弘樹(こまざき・ひろき)さん
NPO法人「フローレンス」代表理事。慶応大在学中、ITベンチャー社長に就任。子どもの発熱のため仕事を休んだことを理由に解雇された人の話を聞き、病児保育問題の解決を志す。2005年に「非・施設型病児保育サービス」を東京都江東区でスタート。都内 23区をはじめ神奈川、千葉県にも事業展開中。
NPO法人フローレンスのURL:http://www.florence.or.jp/
2010年10月14日  読売新聞)

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