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子ども

(7)苦手種目「寝かしつけ」


今や寝かしつけどころか、一人で寝る準備も

 0歳から1歳半までの子どもを持つ父親を対象に、P&Gパンパース赤ちゃん研究所とベネッセコーポレーションが共同で行った調査(http://www.yomiuri.co.jp/komachi/childcare/cnews/20110125-OYT8T00159.htm)によると、育児の中でお父さんが最も苦手なものは、子どもの「寝かしつけ」なのだそうだ。

 私自身も例に漏れず、子どもの寝かしつけは一番の苦手種目だった。長男、次男ともに、これまでも何度か試みてきたものの、泣かれてしまうと、すぐに妻に助けを求める。当然、上達するわけがなく、苦手意識は抜けなかった。

 しかし、育休がスタートした日からは、朝、昼、夜とすべて、自分一人で寝かしつけをしなければならない。これまでずっと母親の抱っこでゆらゆらされながら寝かしつけられてきた次男。それが、ある日から突然、母乳も出ない父親の胸の中で眠ることになる。そんな慣れない環境に、初日から泣き続けて眠ってくれない。しかし、助けを求めて後ろを振り返っても、もちろんそこに妻はいない。

 おんぶをしたり、揺らすリズムを変えてみたり、歌を歌ってみたり、飲み物を飲ませてみたり…と色々と試してみるが、すんなりと眠ってくれない。ヘトヘトになるまで泣き続けてようやく眠る、そんな毎日が続いた。

 妻の方も、復帰直後から、新しい職場での仕事が多忙を極め、疲労もたまり始めていた時期。夜中、疲れ果てて帰ってきた妻が、次男の泣き声で寝付けずに、次男を私から取り上げて寝かしつけようとする。そうした方が手っ取り早いからだ。私の方は、次の日も仕事のある妻にきちんと眠ってもらわなければいけないという思いと、子どもは自分がしっかりと面倒を見なければならないという意地もある。次男を妻には渡さず、自分だけで寝かせようとするが、その気負いが伝わってしまうのだろう。なかなか泣きやんでくれない。

 そのうち、妻から「ちゃんと、寝かしつけてよ」と苦情を言われる。こちらだって、わざとそうしているわけではない。いろいろ工夫しているが寝てくれないのだ。だんだん腹が立ってくるが、確かに寝かしつけられていないのだから、言い返すわけにもいかず、怒りのやり場がない。そのイライラとした気持ちを察してか、さらに次男は泣き続ける始末。結局、妻の手に渡った次男は、その後すんなりと眠り始める・・・。

 これまでは、仕事で壁にぶち当たっても、帰りが深夜になり睡眠時間を削られても、次の日には新たなる展開が待っているということもあり、気合いで乗り切っていくことができた。しかし、肉体的な疲労に加え、寝かしつけがうまくいかない日が続くことによって、前に進んでいないような感覚にも襲われるようになる。日を追うごとに気が滅入ってくるのが分かる。悪いとは思いつつも、仕事で疲れて帰ってくる妻に対してあたってしまうこともあった。

 さらに、追い打ちをかけるように、育休に入って2週間を過ぎた頃、次男が風邪をひいてしまった。熱はどんどんあがっていく。こうなると、一日中抱っこをし続けないと眠ってくれない。眠ったと思って布団に寝かせると、ヘトヘトになっていても泣き続けるので、一晩中、いや一日中、抱っこをし続けなければならない。そんな生活が数日続く。これまで子どもが熱を出したときに、朝方、疲れ切った表情をしていた妻の気持ちが、今になって痛いほどよく分かる。ほとんど眠れないので、日中でも意識がもうろうするし、精神的にもまいってくる。さらに、当時、すでに10kgを超えていた次男を抱き続けることで、腕はもちろんのこと、これまで一度も経験したことのない腰痛にも悩まされるようになった。

 この腰痛があまりにも辛かったこともあり、抱っこをするときに、なるべく負担をかけないような姿勢を心がけるようにした。それとともに、育休に入ってからずっと持ち続けていた「がんばらねば!」という気負いも抜けたのかもしれない。ある日を境にして、次男がすんなりと寝てくれるようになった。寝かしつけ方のコツも、ほぼ同時期につかみ始めた。寝入った頃を見計らい、子どもに呼吸を合わせて、抱っこの姿勢から布団の上に下ろすと、ほぼ確実にそのまま眠ってくれるのだ。

 ひと月ほど経つと、苦痛だった寝かしつけも難なくできるようになった。休日、妻が寝かしつけようとしても眠らず、私が抱っこしてようやく眠る、ということさえあった。そんなときは、少し誇らしげな気持ちにもなる。ちょっとしたきっかけなのだが、精神的にもだんだん楽になっていくのが分かる。人間、毎日同じことを続けていれば、苦手なものだって克服できるようになるものだ。

 さて、それほど苦労した次男の寝かしつけも、育休に入って5か月経った今となっては様変わり。

 眠そうに目をこする次男に「もう寝るか〜」と声をかけると、一人トコトコと寝室に歩いてゆき、加湿器のスイッチを入れ、照明を消す動作までした上で、一人でゴロリと横になって眠るように・・・。苦労して修得した寝かしつけの技も、今やほとんど使うことはなくなった。

 子どもの成長はあっけないほど早い。

高見英樹(たかみ・ひでき)さん
文部科学省大臣官房文教施設企画部計画課専門官。2002年に入省後、学校安全や耐震化、教科書検定・採択などの業務に携わる。2009年10月より現職で、国立大学施設整備の中長期計画などを担当。一級建築士。同期入省の妻と3歳の長男、1歳の次男の4人家族で、昨年10月から半年間育児休業中
2011年2月22日  読売新聞)

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