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「千葉組」が見本示す

 先発の平均身長が1メートル72と小柄で、平均年齢も22・6歳と若いイエメンに対して、日本は序盤から圧倒的にボールを支配したが、引いて守る相手を崩し切れず、前半は無得点に終わった。後半に三都主がサイドバックに下がり、羽生が入ってからようやくスペースが生まれ、これが先制点にもつながった。セットプレーで2得点できたのはよかったが、もう少しリスタートのキックの精度を高めたい。

 守備は危ない場面はなかったが、DF陣でのパス回しが遅く、なかなか効果的なサイドチェンジが出来なかったのは反省材料。

 「ヒーロー」を嫌うオシム監督は、後半開始に投入した羽生(はにゅう)を「そんなに素晴らしくも、ひどくもなく、平凡」と評した。しかし、速度が上がらない前半から、攻めのテンポが一変したのは事実だった。

 羽生が走って、前半の選手が走らなかったからではない。ただ、彼の方が気配りの利いたプレーをした。

 右のスペースを突いてボールを受けた47分のプレー。中央へ切れ込みながら中央に送った浮き球が素晴らしかったのは、巻がヘッドで落とすボールを受けようと、阿部と田中達が巻を追い越して行くタイミングを計ったからだった。

 70分、阿部の先制ヘッドを生んだCKも、今回の練習通りに一度上げたスピードを落とさない羽生のプレーで得た。中盤右から前線の田中達にパス、周囲のスペースが空いていると見ると飛び込んだ。リターンを受けるとさらに、ゴール前の闘莉王とパス交換して抜け出しシュートを放った。

 前半のチームも両サイドのスペースを突き、FWへのボールも入れた。それが効果的でなかったのは、そこから連動させるイメージとタイミングへの配慮が足りなかったからだ。先制直後の相手キックオフでも、巻と羽生はすぐさま相手に襲いかかってボールを奪った。細部への妥協のなさこそがオシム監督のサッカーの根幹で、3年半教えを受けた羽生らは「見本」を示した。

 「他の選手を意識して、だれがどこのスペースを空けてくれたか、もっと意識したプレーをしないといけない」と羽生は言う。オシム監督のやや厳しい羽生への評価も、チーム全体に、それが当たり前のレベルになってほしいという願いがあってのことだろう。(助川武弘)

2006年8月17日  読売新聞)
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