(上)暖冬 餌の確保に味方■採餌「ドジョウ、カエルだけでなく、クモや冬眠している幼虫まで、何でも食べているようだ」 昨年9月の放鳥から観察を続ける「日本野鳥の会」佐渡支部副支部長の土屋正起さん(58)は、トキの食欲旺盛ぶりをこう語る。 当初、冬場の餌確保は野生復帰に向けた最大の課題の一つとされた。環境省によると、佐渡ではこの冬、積雪で水田や畦(あぜ)が何度か雪に埋もれたが、トキは水路など流水のある場所や、雪の少ない場所を選んで餌を採ったという。 佐渡トキ保護センターの金子良則獣医師は「大暖冬で、天気が味方した」と語る。 環境省の分析では、午前6時過ぎにねぐらを飛び立ち、午後4時半前後に戻るのが行動パターン。ねぐらから4キロ圏内の餌場で、1日当たり5〜6時間を餌探しにあてているという。採餌場所の6割は水田(刈田)で、種類別ではドジョウの割合が最も高く、11月で27%、12月で21%に達した。 一方、農家などの協力で人工的に造成してきたビオトープにはほとんど寄りつかなかった。新潟大学農学部の本間航介准教授は「稲が成長すれば、トキは田んぼに入れなくなる。夏の餌場として利用されるのでは」と期待を寄せる。 ■はぐれトキ昨年10月末、個体識別番号03番の雌が本州側の胎内市で確認された。今月に入ってからは、2羽の雌(07番、13番)が相次いで海を越えた。環境省の計画では、2015年までに佐渡島内に60羽の定着を目指しており、「想定外」(同省)の事態だった。 同省佐渡自然保護官事務所の岩浅有記自然保護官は「少なくとも新潟まで40〜50キロ近く連続飛翔できることが初めてわかった。仮に生息圏が佐渡より広いことが明らかになれば、今までの想定とは違う自然環境や社会環境の整備が必要だ」と語る。 本州に渡った理由については、様々な見方がある。 新潟地方気象台によると、本県など日本海側では、西高東低の冬型気圧配置が強まると北西の季節風が吹きやすくなるという。県愛鳥センター(新発田市)は「冬場はカモメなどの海鳥が通常飛来しない内陸にまで風で飛ばされることがあり、季節風が影響した可能性もある」とする。 一方、トキ野生復帰専門家会合の座長を務める山岸哲・山階鳥類研究所長は「鳥類は、近親交配を避けるため一般的に雌が分散する傾向がある。次回放鳥では雌を多めに放つことも必要かもしれない」と話す。 また、昨年の放鳥では、多くの市民が見守る中、木箱から1羽ずつ放鳥したことで、トキが分散し、群れの形成を阻害したとも見られている。環境省は、今秋の次期放鳥に向けて、放鳥場所に設けた仮設ケージで1か月ほど慣らした上で、仲間と共に自由に飛び立たせる「ソフトリリース」を検討している。 ◇ トキが佐渡の空に放されてから25日で半年。新たに明らかになったトキの生態、トキを見守る島民の表情を紹介すると共に、今後の野生復帰の課題を探る。
(2009年3月25日 読売新聞)
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