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追加量的緩和の思惑、高まるか?

1 概況:ドル円、40銭程度の狭いレンジで小動き

 先週のドル円相場は76円台後半で開始、週初は日本が祝日であったこともあり、76円台後半での小動きな展開となった。

 週央の11日には、格付け会社からの「欧州中央銀行(ECB)による積極的な関与がなければユーロ崩壊を回避できない」というネガティブな発言やフランス国債格下げの噂から、ユーロドルが売られてドル買いの流れが強まり、ドル円は週高値となる77.04円まで上昇した。

 翌12日には、スペイン債やイタリア債の入札が好調だったことや、ECB理事会後のドラギ総裁の会見で悲観的な内容がみられなかったことから、ユーロドルの買い戻しが入りドル売りの流れが強まると、ドル円は週安値の76.67円まで下落した。
週末13日は、ユーロ圏諸国の格下げ観測からユーロドル売りが強まり、ドル円はユーロドルのドル買いに押されて77.00円付近まで上昇する展開となった。

2 見通し:引き続き方向感乏しい展開か

 依然、欧州問題に焦点が集まる中、ドル円はユーロドルの動きにつられた主体性のない動きが継続するだろう。格付け会社によりユーロ圏諸国が格下げされたことでユーロドルは2010年8月以来の水準まで下落し、引き続き下値のリスクが存在する。

 ユーロドルのドル買いにつれてドル円が上昇する可能性はあるが、77円台には日本の輸出企業や海外勢の売りが控えている。また、チャートを見ると日足の基準線や雲がレジスタンスとして意識されやすく、上値余地は限定的であろう。
今週は注目指標として、17日にニューヨーク連銀製造業景気指数、19日にフィラデルフィア連銀製造業景気指数と住宅着工、20日に中古住宅販売が予定されている。

3 ズバリ:今週の予想レンジ

予想レンジ
76.60〜77.30円

メンバー変更後、初のFOMC

 足許、雇用統計をはじめとした米経済指標は予想に比べて良好な結果がでており、米株式市場も堅調に推移しているため、米の追加量的緩和についてはあまり話題に上がっていない。ただし、最近の指標の結果はサンクスギビングや年末の影響によるもの、という指摘がある上、例年12月は季節調整で上がりやすいという性質があることや、根の深い欧州債務問題の状況を考えると、このままアメリカ経済だけが回復していくとは考えづらい。

 今年の連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権所有メンバーにはハト派が多く、その中でもダドリー・ニューヨーク連銀総裁やウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁から追加量的緩和の必要性を指摘するコメントがあり、今後の経済指標次第では追加量的緩和への思惑が高まる可能性がある。

 冒頭で記したように、足許経済指標が良好なため、近い将来に追加量的緩和が実施される可能性は低い。しかし、今月は投票権所有メンバー変更後、初めてのFOMCとなる。また今月から、金利動向に関する見通しを公表することになったため、結果次第では追加量的緩和の思惑が生まれ、ドル買いに傾いたマーケットを反転させる可能性があると考える。

 ※ドル円相場は、みずほコーポレート銀行の取引によるものです。

プロフィール
田中 潤平  (たなか・じゅんぺい)
みずほコーポレート銀行 国際為替部


みずほコーポレート銀行国際為替部の為替ディーラーが執筆を担当します。(「先週」「今週」などの表記は、執筆日を基準にしています)
2012年1月16日  読売新聞)

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