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[評]十一ぴきのネコ(こまつ座、ホリプロ)

今だからこその風刺


写真・田中亜紀

 「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」の第1弾として、「子どもとその付添いのためのミュージカル」の副題を持つ本作が選ばれた。馬場のぼるの絵本を基にした、今に通じる、いや今だからこその批評性と風刺の効いた作品だ。台本は1971年初演のテアトル・エコー版。

 野良ネコたちのさまざまな鳴き声の後、「お家がない 仕事がない」の「ないない」づくしの「にゃあごろソング」で幕を開け、ネコたちは空腹退治に死ぬしかないと準備を始める。そこへ登場した、にゃん作老人(勝部演之)が大きな湖にいる大きな魚の話をする。

 すきっ腹を抱えた指導者・にゃん太郎(北村有起哉=写真前列中央)ら11匹が、大魚を求めて旅に出る。にゃん作老人は、彼らを見送って独り静かに命を絶つ。ちなみに日本の年間自殺者3万人以上は、昨年で14年連続。

 野良ネコたちは大きな湖にたどり着き、大魚を仕留め、この土地に野良ネコ共和国を建設する。10年後、にゃん太郎が大発展を遂げた共和国の繁栄と腐敗を語っていると、9匹の黒い影が忍び寄る……。

 終幕、にゃん十一(山内圭哉)が「十一匹のネコが旅に出た」を歌いながら、客席から退場するのが印象的。目的を一つにした旅は何だったのか。無残に終わる、にゃん太郎のエピローグに、作者の思いが込められている。

 名前に頼らず、小劇場系の俳優を中心に固めた配役。彼らの切れの良い演技と、呼吸の合った軽快なアンサンブルが小気味良い。演出は長塚圭史。(演劇評論家・北川登園)

 ――31日まで、新宿・紀伊国屋サザンシアター。

2012年1月18日  読売新聞)

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