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企業が担う

(2)技術者が手弁当で講師

 おもちゃのブロックで作った自動車型ロボットが、体育館の床に貼られたビニールテープに沿って進む。

 12月中旬、神奈川県・大和市立引地台小学校の6年生の総合学習の時間。「そこで止まって!」と応援する子どもたち。ロボットがゴールでピタリと停止すると歓声が起こった。

 日本アイ・ビー・エムが主催する「ROBOLAB(ロボラボ)教室」。パソコンでロボットの動きを制御するプログラムを作り、思い通りに動かすことを目的とした課題解決型の授業だ。アメリカで技術者たちが参加して毎年2月に行う「エンジニアズ・ウイーク」を参考に、2006年に始めた。

 授業の主眼は、技術者自らが子どもたちに数学や科学技術の面白さを伝えること。この日も同社のエンジニア10人が同小に出向き、講師を務めた。

 「絶対にできるから、最後まであきらめないで」と、児童に何度も声をかけていたのは、同社サービス部門で働く當間基正さん(34)。「繰り返しチャレンジして成功した時の喜びを、ぜひ味わってもらいたい」

 「よき企業市民たれ」を企業理念に掲げる同社は、教育貢献をCSR(企業の社会的責任)の柱として掲げる。準備するプログラムは、理科のほか、環境、英語、キャリア教育の支援など多岐にわたる。

 「教育CSRを支えているのは、社員の自発的なボランティア。社内のボランティア・ネットワークに登録している社員は5割近くに上る」と、塚本亜紀・社会貢献プログラム・マネジャー。この日講師を務めた10人も、ボランティア休暇などを利用して参加した。50時間以上社会貢献活動をした社員の表彰制度など、社内にはボランティア文化が根づいているという。

 「上級コースをクリアできなくて、とても悔しい。プログラムを作るエンジニアは、すごいなあと思った」と感想を語ったのは、田辺道人君(12)。多田夏奈子さん(12)は「デコボコな道でもまっすぐ歩ける人間の臨機応変さに気づき、面白かった」と感心した表情を浮かべた。

 「知識も装置もない私たちにはできない授業。すぐに分からないと言ってあきらめてしまう子が、目をキラキラと輝かせて何度も挑戦するなど、普段とは違った一面を見られた」と池田真由美教諭(48)。

 ゲスト講師による授業は、教師に、児童の新たな姿を発見する機会も与えている。(保井隆之)

 エンジニアズ・ウイーク アメリカで子ども向けに数学、科学技術など様々なイベントを実施する毎年2月第3週のこと。技術者の仕事に興味を持ってもらおうと1951年に始まった。75以上の学者・技術者団体、50以上の企業・政府機関が参加する。日本では日本アイ・ビー・エムが2006年から、これらのイベントをアレンジして通年プログラムとして実施している。

2012年1月13日  読売新聞)
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