債券投資のイロハ(3)外貨建て債とそのリスクファイナンシャル・プランナー 石原 敬子4回シリーズでお伝えしている、「債券投資のイロハ」。1回目は債券の概要と信用リスクについて、2回目は利率と利回りや価格変動についてお伝えしました。今回は、外貨建て債の全般について解説します。 外貨建て債とは外貨建て債とは、債券の額面が「○○米ドル」「○○ユーロ」「○○オーストラリアドル」といった、外国通貨で表示されているものです。 一般的な外貨建て債は、投資家が債券を購入する際にその通貨で支払い、利子をその通貨で受け取り、償還金(満期金)をその通貨で受け取ります。日本国内の投資家は、基本的には、外貨建て債の購入時に円をその通貨に交換したり、利払い時や償還時にその通貨から円に交換したりします。交換時の為替レートは、その時の為替相場に準じて金融機関が手数料を上乗せしたり差し引いたりして決定する為替レートが使われます。 「外貨建て」に対する言葉は「円建て」です。円建て債は、債券の額面が「○○円」で表示され、利子や償還金が為替変動の影響を受けることはありません。債券の発行体が海外の国や企業であっても、額面が円建てで発行されれば円建て債に分類されます。 なお、一般的でない外貨建て債の代表例としては、二重通貨債があります。デュアルカレンシー債やリバース・デュアルカレンシー債は、二重通貨債の一種です。二重通貨債とは、払い込み・利払い・償還について、異なる2種の通貨が用いられる債券を指します。 たとえば、債券の発行時に円で払い込み、利子を円で受け取り、償還は米ドルで受け取るというタイプは、円と米ドルのデュアルカレンシー債です。この場合は、償還金が円対米ドルの為替レートを元に計算され、為替リスクが生じます。リバース・デュアルカレンシー債は、払い込みと償還金が円で、利払いが米ドルなどの外国通貨、といったタイプを指します。利払いについて、為替リスクが生じます。 為替変動にともなう「為替リスク」ではここで、「為替相場の影響を受ける」「為替リスク」について説明をしておきましょう。 為替相場とは、「外国為替市場」のことで、異なる通貨を交換する場所です。2つの通貨を交換する時の交換比率が為替レートで、刻々と変動します。たとえば「1ドルはいつも100円と交換する」というように、交換比率が一定というわけではありません。みなさんがニュースなどで見聞きする「今日の為替相場」は、日々の取引に応じて変動する、2つの通貨の交換比率を報道しているのです。 外貨建て債を購入・保有・償還する場合の、為替変動による影響を(図表1)で考えてみましょう。理解しやすいように、利払いは年1回とし、税金込みの金額で示すこととします。なお、本来は前述の通り、為替相場のレートに手数料を加えたり差し引いたりした取引レートを適用するのですが、ここでは簡略に説明することを優先するため、為替交換手数料は考慮しないこととします。 このように、外貨建て債は、円ベースでの購入代金や利払い金額、償還金額が為替レート次第となります。その変動は、為替相場の動きに委ねられていて購入時には確定しておらず、確実な予測も不可能です。このことを「為替リスクがある」といいます。 国の事情による「カントリーリスク」また、債券のリスクには、カントリーリスクもあります。カントリーリスクとは、債券を発行する国や、債券を発行する企業が属する国、また債券の発行・利払い・償還に適用される通貨の国の事情から受けるリスクです。関係する国の事情が、債券の価格や信用性に影響するのです。その国の政治・軍事・財政・経済状態などが安定していれば、投資家にとって資金を貸し付けることの不安は少なくて済みます。国の情勢が不安定であれば、その国が発行する国債やその国に属する企業の社債は、償還までの返済能力が不安視され、信用リスクの高さにもつながります。債券価格も下落傾向となるため、途中換金をする場合の受け取り金額が額面以下になることもあります。 債券を購入する場合には、購入時だけでなく、償還までの間にわたり、その債券に関係する国が安定した状態であるかどうかを考えなければなりません。外国債や外貨建て債は、その債券の発行国や適用される通貨国の情勢を常に気にしておく必要があります。外国の情報は身近でない分、投資家自身が意識してニュースなどに耳を傾けることが大切です。
(2011年9月29日 読売新聞)
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