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ココに注意!「事実婚」とお金の話


ファイナンシャル・プランナー 竹下さくら

 最近、身近に“事実婚”の人が増えました。夫婦別姓を支持する若い人のほか、シニアで事実婚を選択する人もいます。

 ただ、婚姻届を市区町村に出して入籍をする「法律婚」に比べ、婚姻届は出さないながら事実上の婚姻関係にある「事実婚」には注意すべきポイントがたくさんあります。

 今回は、事実婚と法律婚の対応の違いと、生命保険契約の現状についてまとめてみました。

税金と相続の扱いに要注意

 事実婚の話をすると、まず聞かれるのが「内縁」と「同棲」との違いです。ひらたく言えば、内縁は事実婚と同じです。

 では同棲はどうかとうと、婚姻届を出さずに一緒に暮らしているという点では同じなのですが、その違いは、結婚の意思があるかどうかによります。

 たとえば、事実婚の場合、住民票の続柄は「妻(未届)」「夫(未届)」「同居人」などになっています。単なる同棲の場合は、男女ともに世帯主になる違いがあります。

 ここで、事実婚と法律婚の違いについてシンプルにまとめてみました(不倫による事実婚は除きます)。

◆法律婚と同じ扱いになること(例)
・パートナーの健康保険に入るなど、同居していて一定の所得条件を満たせば、社会保険関係は実態重視のため、法律婚の場合と同じ扱いになります。
・公営住宅の入居は、住民票の続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」「同居人」などとなっていれば入居OKです。
・事実婚解消時の慰謝料請求は、責任が一方にある場合、相手に対して請求可。
など。これが、単なる同棲の場合は、法律的に保護されていないため、例えば別れても慰謝料の請求などはできないわけですね。

◆法律婚に比べて注意を要すること(例)
・離婚時の厚生年金の分割は、事実婚の解消の場合も、「合意分割」「3号分割」が利用可能。ただし、事実婚は婚姻期間の証明が難しいため、分割の対象は、第3号被保険者だった期間のみとなります。
・住宅ローンの連帯債務者には、住宅金融支援機構のフラット35であればなれますが、民間ローンでは難しいのが一般的です。

◆明らかに不利になること
・所得税の計算上、配偶者控除や医療費控除は受けることができません。
・介護施設の入居について、事実婚カップルの入居は断られたり、パートナーの入居時の保証人になれないところが多いです。
・成年後見の申し立てはできません(4親等までの親族が可能)。
・パートナーの入院時の保証人になることや、手術時の同意書へのサインはできないのが一般的です。
・相続において、法定相続分や遺留分がありません。子どもがいれば、その子どもに遺産の全てがいきますが(他に子どもがいない場合)、子どもがいない場合には、他の相続人が相続する仕組みです。遺言書を作成するという対策をとればパートナーから相続を受けることはできますが、この場合、相続税の軽減措置(基礎控除や配偶者の税額軽減)は受けられない点は理解しておきましょう。

生命保険には2つの条件

 では、受け取り人に事実婚のパートナーを指定して生命保険に入ることはできるでしょうか?

 結論から言えば、なかなか難しいのが現状です。3親等以内でなければ受け取り人にできないという理由で、バッサリ断る保険会社も多い状況です。事実婚OKという保険会社でも、一般的に、民間の生命保険会社では所定の条件を満たさなければ、契約時に事実婚のパートナーを受け取り人にすることはできません。条件としては、以下の2点を求めるところが主流です。

・住民票が同じ住所で、同居から数年以上(3〜5年以上など)経過していること
・被保険者と受け取り人双方に、戸籍上の配偶者や子どもがいないこと

 また、調査員による契約確認などを行うところも多く、それを経て契約OKとなっても保険金額に上限が設けられていて高額な契約はできないケースが多いです。

 事実婚の保険契約は、いざ保険金を請求するという際に、死亡診断書などの必要書類の取り寄せが難しかったり、戸籍上の配偶者や子どもがいるケースでトラブルになったりすることもあるため、保険会社は慎重な取り扱いをしている現状があります。

 今回の記事に触れませんでしたが、子どもが生まれた時の取り扱いと、相続、そして生命保険が、事実婚の場合に特に留意すべき3大ポイントと考えます。事実婚を選択する方は、住民票登録との遺言書の作成は早めにしておきましょう。
【私のつぶやき】
 事実婚の生命保険契約には、実は奥の手があります。それは、今年の連載でも何度か取り上げてきた「生命保険信託」や「遺言信託」を活用するという方法です。
 こうした“信託”の仕組みを使えば、事実婚のパートナーにスムーズに保険金を託せることは知っておきたいところです。
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プロフィール
竹下さくら  (たけした・さくら)
 1969年生まれ。CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。「なごみFP事務所」を共同運営。損保・生保の本店業務部門を経て、独立系FPに。ライフプランをベースにしたコンサルティングのかたわら、講演・執筆活動を行う。
2011年7月28日  読売新聞)

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