2012年の重大投資テーマ2012年(平成24年)の干支は壬辰(みずのえ・たつ)である。旺文社「漢和辞典」によれば、壬は十干の第九、はらむ=妊を意味する。辰は十二支の第五、動物では唯一想像上の「竜」、星は北極星(北辰)が当てられ、時刻は午前8時、および前後2時間、あるいは夜明け、という。竜は雲を呼んで空に昇り、あるいは深く水中に棲む。ならば、願いは「燃えよドラゴン」か。戦後の壬年の平均騰落率は34%上昇、辰年のそれは29%でともに第一位である(日経平均株価)。前号で、2011年の回顧と2012年の展望をまとめたが、2012年のニュース・出来事・投資テーマを改めて、考えてみた。 日本の重大ニュース・出来事■東北復興景気の本格化、スマートシティ建設が目玉 世界の重大ニュース・出来事■世界の主要国で、首脳交代か 日本では、まず、■東北復興の槌音を確認することになる。内閣府は東日本大震災による社会資本ストックの毀損額を16兆〜25兆円と推計している。想定される主なインフラ工事と震災での被害額は図表1のとおりである。 図表1 想定される主なインフラ工事と震災での被害額 (出所)いちよし経済研究所作成。想定被害額は内閣府、農林水産省、各県調査など 昨年11月に大型の2011年度第3次補正予算が成立し、インフラ工事が本格的に始まるものと見られる。政府は復旧・復興対策の事業規模を10年間で23兆円程度と見込んでいる。 株式市場では直接的には復興復旧工事関連が浮上するが、成長戦略と重なるスマートシティの建設がより大きなテーマである。それだけに、その基礎となる電力会社の発電-送配電-小売り各事業の分離が前提となろう。 ソーシャルメディア関連としては■電子書籍にスマートフォンの流れが回るのではないか。部品会社などの当該分野は変わらないだろう。2011年のIPO(新規株式公開)で注目を集めた会社のひとつに、スマートフォンおよびタブレット端末向け等に、コミックを中心とした電子書籍を販売する、イーブックイニシアティブジャパンがあった。 円高を利用した■日本企業による海外企業の買収も多発しよう。2011年の日本企業による海外M&A(企業合併・買収)は総額6兆円強(前年比7割増)となり、過去最高となったようだ。最大の案件は武田薬品工業が1兆円を投じたスイスの製薬会社ナイコメッド買収だった。歴史的な円高が続いており、2012年も高水準の海外M&Aが続こう。 一方で、企業の既存事業の統廃合を求めるリストラクチャリング(事業の再構築)が進展する。秋にも■親子上場禁止の会社法改正案提出が予想されており、上場子会社の再編・解体も想定される。東証・大証の2013年1月の経営統合が進む中で、上場企業も2012年を通して事業の再構築が一段と進められよう。 世界に目を転じると、日本を取り巻く2012年の投資環境は多難な船出となっている。欧州債務問題がまず気になるが、2012年は■世界の主要国で、国政選挙、政権交代が予定されている。2011年末、北朝鮮において指導者交代が突然に起こったが、1月は台湾総統・立法院選挙がある。現時点では、現職馬総統と蔡民進党主席は五分五分とみられ、交代の可能性は十分ある。 図表2 2012年世界政局カレンダー (出所)各種資料を基に、いちよし証券アドバイザーサポート部作成 続いて、3月はロシア大統領選挙。こちらも状況は予断を許さない。4月はフランス大統領選挙が控えている。さらに9月は日本の民主党代表選挙、10月は中国共産党大会、11月は米大統領選挙、12月は韓国大統領選挙が予定されており、政治版惑星直列の状態になる。米大統領選挙は11月とはいえ、共和党の候補者選びは1月3日のアイオワ州党員大会から始まっている。 欧州の■債務危機の問題は、3月末のギリシャ国債の145億ユーロや、1-4月にやってくるイタリア国債の1600億ユーロもの大量償還が気になる。ユーロ圏だけで2012年に8600億ユーロの国債償還を迎えるが、当面は1月末のユーロ首脳会議が注目されよう。債務危機は一朝一夕で片がつく問題ではないが、ある意味で予定されている「危機」であり、新たなセーフティネットの強化・構築も想定され、むしろその都度、好材料になる可能性もある。もちろん、■EU再編が問われる中で、ギリシャの離脱、ユーロ有力国の国債格下げ等も課題になろう。 図表3 主要国と注目国のS&P社の格付け (注)格付けは2011年12月末現在 (出所)各種資料を基に、いちよし証券アドバイザーサポート部作成 米国では年末年始にかけて各種経済指標の発表が相次いだが、雇用統計の予想以上の改善など総じて米経済の緩やかな回復を裏付けている。住宅市場の改善は進展しているし、企業景況感も良好である。2012年の■米国経済は回復力に弾みがつく状況も予想されよう。また、NY市場を活性化させる話題として■米フェイスブックの株式上場があげられる。4-6月あたりとみられるが、1年前には時価総額が500億ドルと試算されていたが、最近は倍の1000億ドルとの評価も聞かれ、ネットショッピング、スマートフォン、ソーシャルメディア、インターネット関連全体を活性化させる可能性がある。 新春早々の東京・築地市場の初競りで、1本269キロの青森・大間産のクロマグロが5649万円(キロ当たりで昨年の倍以上)で競り落とされた。幸先の好い相場のサインとみたい。 鈴木東陽(すずき・とうよう) 日本証券アナリスト協会検定会員。証券専門紙や経済誌、三洋経済研究所などを経て、現在、いちよし経済研究所シニアアナリストとして、投資セミナーや経済講演などに従事。 (2012年1月11日 読売新聞)
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