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appとgoogle 「今年の言葉」と「この10年の言葉」

 アメリカにAmerican Dialect Society、日本語に訳せば「米国英語学会」とでも呼ぶべき団体があります。直訳すれば、「米国方言学会」ですが、ここで言う「方言」とはアメリカで話される英語のことです。

 この学会は1889年に設立された言語の専門家の集まりで、1990年から毎年、「今年の言葉」を選んでいます。

 2010年はパソコンやスマートフォンで使うapplication(アプリケーション)の省略語であるappでした。

 appを選んだ理由については次のように説明しています。

 「appは何年か前から使われていたが、過去12か月で爆発的に広まった」

 「最も説得力のあったのは『私のおばあさんもこの言葉を知っている』という意見だった」

 アップルがiPhoneやiPadの宣伝で、莫大な広告費をかけて、この言葉を広めたおかげでしょう。

 この学会は「この10年の言葉」も選んでいます。2000年代に入って最初の10年を象徴する言葉は、インターネットの検索を意味する動詞で、英語の辞書にもすでに載っているgoogle(グーグル)でした。ちなみに第2位はやはりネットに関連する言葉であるblog(ブログ)、第3位は9/11(ナイン・イレブン=2001年9月11日の米同時テロ)でした。

 将来の歴史家が21世紀の最初の10年間を振り返ったとき、どんな時代だったと記述するでしょうか。

 この10年、世界では様々なことが起こりました。2001年の同時テロで国際政治は大きく変わりましたし、2008年のリーマン・ショックに端を発する金融危機も大きな出来事でしたが、googleが「この10年の言葉」に選ばれたことに象徴されるように、「本格的なインターネット時代が到来し、それが様々な分野に影響を及ぼし始めた」と振り返る歴史家もいるはずです。

 実際、今年に入ってからも、中東の一連の政変でフェイスブックやツイッターが大きな役割を果たしました。

 次々と新しいアイデアや利用法が登場するネットの世界。2010年代も「今年の言葉」に選ばれる新語が次々と出てくるかもしれません。

          

 言葉は時代を映し出します。英語を中心に、世の中の流れや変化を象徴する新語や流行語を紹介していきます。

筆者プロフィル

大塚 隆一
1954年生まれ。長野県出身。1981年に読売新聞社に入社し、浦和支局、科学部、ジュネーブ支局、ニューヨーク支局長、アメリカ総局長、国際部長などを経て2009年から編集委員。国際関係や科学技術、IT、環境、核問題などを担当
2011年5月25日  読売新聞)

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