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麻薬の”運び屋”にならないために

研究員の顔ぶれ

調査研究本部主任研究員 飯山雅史

 海外で、違法薬物密輸の罪で逮捕される日本人が増えている。

 10月にはマレーシアで、覚醒剤を持ち込んだ罪に問われた日本人女性が、死刑判決を受けるというショッキングな事件も発生した。麻薬は、世界各国で極めて深刻な社会問題を引き起こしており、密輸には重罰でのぞむのが世界の趨勢だ。同国に限らず、タイやシンガポール、エジプトや中国でも最高刑は死刑であり、イギリス、フランス、アメリカでは終身刑なのである。

 「自分は密輸になんか関わらないから関係ない」と思うなかれ。恐ろしいのは、自分が知らない間に”運び屋”に仕立てられてしまうケースがあるということだ。先日、読売テレビの番組で指摘していた事件をいくつか紹介しよう。

 実際に起きた事件では、日本人のツアー客が、経由先のマレーシアで、現地ガイドの人から「スーツケースが盗まれてしまった」と言われたケース。その現地ガイドは、代わりに別のスーツケースを用意していて、「これを使ってください」と親切に渡してくれた。ところが、それは二重底のしかけがあって、中には13キログラムのヘロインが入っていた、というものだ(1992年6月、到着先のメルボルンで発覚)。

 さらには、70歳の日本人女性が、旅先で知り合った男性から、プレゼントだと言われて受け取ったパッケージに、麻薬が入っていたケースなどもある。この他にも、知り合いから「重要なものを海外に取りに行く予定だったのに、行けなくなった。旅行費用はこちらが出すから、取ってきてくれないか」と頼まれたりするようなこともあるそうだ。

 現在、海外で薬物犯罪の罪によって死刑判決を受けた日本人は10人。そのうち死刑執行されたのは4人もいる。不正薬物の関係で逮捕された日本人は、2006年1月では88人だったが、今年は119人に増加した。

 もちろん、金目当てで密輸に関わった犯罪者は、法と正義に乗っ取って刑罰が下されるべきだろう。だが、知らないうちに運び屋にされてしまったとしても、自分の荷物から不正薬物が発見されれば、「知らなかった」というのは、たいてい通用しない。無実の証明は極めて難しいのだ。

 大事なことは、他人から中味のわからない荷物を受け取らないこと。そして、自分の荷物にもきちんとカギをかけておくことだ。楽しい海外旅行が、人生の分かれ目に、あるいは、本当に人生の終わりになってしまう危険は、誰にでもある。

2011年12月9日  読売新聞)

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