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米金融政策の動向見極めへ

1:概況 上値トライ

 米国雇用統計を受けた4日の東京は、84円台前半でオープンするも、小動き。海外時間に入り、利食い売りで83円台後半へ小緩む展開となった。

 5日、アジア時間のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長講演の影響は限定的で、ドル円は84円台前半で推移すると、海外時間には良好な英購買部協会景気(PMI)指数を受けて英国ポンド円が136円付近から138円台へと上昇したことに加え、連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が米景気に強気な見方を示したことなどを受け、ドル円は84円台後半へと上昇した。

 6日の朝方、ドル円は85円台半ばへと上昇後、久しぶりの85円台であることで売りが入り一時84円台後半へ緩むも、連邦公開市場委員会(FOMC)の断続的利上げの思惑でユーロ円が買われると、ドル円も85円台前半に上げた。

 7日、日銀政策決定会合では緩和姿勢の継続を確認したものの、ECBを前にユーロ円の利食いが断続的に持ち込まれた影響で、ドル円も頭重く85円割れへと下落した。ECBは0.25%利上げで、出尽くし感で一時ドル買いとなり、ドル円は85円台を回復したが、その後の宮城県沖での大規模余震でリスク回避の動きとなり、84円台半ばへと下落したが、津波警報の解除で再び85円台を回復した。

 8日、日経平均の上昇でリスク選好が高まり、ユーロ円が上昇する中、ドル円も85円台前半で推移したが、ニューヨーク時間には米国予算協議への懸念でドル売りが進みドル円は84円台後半へと下落し越週となった。

2:見通し 高値圏で揉みあい

 日銀の緩和姿勢とECBの引き締め姿勢を確認し、今後の焦点が量的金融緩和の第2弾(QE2)の期限が迫る米国の金融政策動向へと移行していくと考えられる。

 特に今週は、次回FOMC(4月26〜27日)の討議材料となる地区連銀報告書(13日)や、先週発表されたFOMC会合議事録で重要性に言及されたインフレ指標(14日の生産者物価、15日の消費者物価)が発表される予定。市場参加者はそれらの結果を見極めるまで、リスク積み増しに動きにくいものと思われ、一方向でのドル円の上昇は見込み難く、高値圏での方向感の出ないもみ合いとなるのではないか。

3 ズバリ:今週の予想レンジ

予想レンジ
83.70〜85.70円

トピックス 市場参加者の心理

 食料、石油、金などの高騰を受けてインフレが世界的な懸念材料となっており、新興諸国や資源国に加え、先週にはECBが利上げを開始した。いよいよ米国もQE2の出口が議論され始めている。一方、国内では東日本大震災の影響もあり、日銀は金融緩和を強化しており、明らかに当局の金融政策スタンスのベクトルが異なる。

 これら当局のベクトルの差に加えて、震災直後の協調介入で市場には円売りポジション保有に安心感が出ていることを背景に、豪ドル円、ユーロ円などを始めとした円キャリートレード復活の声が聞こえてくる。

 前回の2005年から2006年にかけて円キャリートレード全盛時代には、市場参加者はこぞってキャリートレードを行っていた。「恐怖指数」と言われ市場の不安感を表すといわれるVIX指数は10〜15で推移しており、極言すれば、「みなで渡れば怖くない」というような行動をとっていた。

 震災後に「恐怖指数」は一時30付近まで上昇していたが、このところ17付近で推移しており、市場の不安感も薄らいでいるのが見て取れる。

 投資判断を行うときに恐怖と欲望の間で迷うことはよくあるが、少なくとも、他の市場参加者の心理状態を把握することは、自分を客観的に見るのに役立つと思われる。そのためにVIX指数の動きを見ることも有用であろう。

 ※ドル円相場は、みずほコーポレート銀行の取引によるものです。

プロフィール
長谷川 浩一  (はせがわ・こういち)
みずほコーポレート銀行 国際為替部


みずほコーポレート銀行国際為替部の為替ディーラーが執筆を担当します。(「先週」「今週」などの表記は、執筆日を基準にしています)
2011年4月11日  読売新聞)

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