政治家を支えるカネ
政治部 尾山 宏
「政治にモノを言い、政治を憂うのであれば、是非お金を出してください」
民主党の馬淵澄夫元国土交通相は、年明け早々から地元・奈良市で個人献金集めに奔走している。
馬淵氏は2003年の初当選以来、企業献金を一切受け取らず、政治活動を個人献金に頼っている。政治資金集めのパーティーを開催したこともない。
政界を志す前の会社経営者時代、企業献金やパーティー券購入を頼まれる度に「何のためのカネなのか、疑問に思った」ことから、自らには個人献金での活動を課し、選挙区内を一軒一軒歩いて回るようにした。
「懐が痛む金額でないと、本気で応援してくれない」とし、献金は「1口1万円」。年々増え続けた結果、10年は2417万円と報告。11年は3000万円近くにのぼる見通しという。10年の民主党衆院議員1人当たりの平均個人献金額は611万円で、馬淵氏の献金額は上位にある。
馬淵氏は「個人献金集めは大変だが、業界団体の言うことを聞かなくて済むから、楽だとも言える」と自負する。
民主党は09年の衆院選政権公約(マニフェスト)で「企業・団体献金の禁止」をうたったが、不況で個人献金が伸びず、代替収入になり得ていないことから、実施を見送っている。「真剣に取り組もうとしないから、実現しないだけだ」と馬淵氏。
もっとも、いくら個人献金が伸びても、「1回で最低2000万円の収入」とも言われるパーティー開催などがなければ、懐事情は厳しい。馬淵氏は事務所の職員総出での献金集めも考えている。
自民党の河野太郎衆院議員も個人献金が多いことで知られる。10年には2366万円を集めた。
河野氏の場合、パーティーなどにも収入を頼っているが、個人献金重視の立場から、昨年9月、自らのメールマガジン「ごまめの歯ぎしり(応援版)」を月額525円で配信し、ネット上のクレジットカード決済での献金集めを始めた。現在のひと月の「購読料」は十数万円という。
「田川誠一さん(故人、元新自由クラブ代表。河野氏の縁戚)は、『コーヒー一杯の献金を』と支持者にお願いし、献金してくれた人には必ず礼状を書いていた。僕もそれを見習いたい」と河野氏。
米国のオバマ大統領が08年の大統領選の際、ネットを利用して多額の個人献金を集めたことを契機に、日本でもネット上での献金が広がった。「政治資金規正法が禁止している外国人からの献金かどうかが不透明だ」と、その是非に議論があるため、二の足を踏む議員もいるが、手軽さから増える方向とされる。馬淵氏も河野氏の手法を検討中だ。
リクルート事件で政治不信が高まり、政治改革が大きな課題に浮上したのは1989年のこと。その後、政治家個人の資金集めが腐敗の温床になっているとして政治家個人の資金集めを抑制し、政党助成制度が創設された。
野田政権は、消費税増税を前に「身を切る改革」を行う必要があるとして、政党助成金や国家議員歳費の削減を検討し始めた。他方、政策立案など政治家の活動に一定の資金が必要であることも事実。
いかに有権者の理解を得ながら、カネ集めをするか――。議員の試行錯誤は続く。
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