「きびそ」でバッグを作ろう! 第3回 きびその町へ行ってきました(下)
「きびそ」の町、といえば、山形県鶴岡市です。
ゴワゴワ、モジャモジャの状態のままで眠っていた「きびそ」に光をあて新しいシルクの可能性を探ろうという「きびそプロジェクト」。それを支える鶴岡シルク社員井上敬裕さん、齋藤美紀さんの案内で、鶴岡市を訪ねました。
明治維新から続くシルクの歴史を訪ねて
最初に案内されたのが、松ヶ岡開墾記念館です。明治時代、鶴岡武士たちが刀を捨て、開墾に力を注いだ歴史を伝える資料が展示されています。その建物は、明治8年に建てられた、もとは蚕室だそうです。
脇にある小さな建物をのぞくと、カイコ! がいました。もちろん、シルク、きびそ、すべての主役です。かつては、この蚕室が10棟も立ち並び、カイコたちが絹の原料を文字通り大量生産していたといいます。
「風通しがよく、冬は暖房設備が整った環境に蚕たちは飼われていましたが、人間は土間で寝起きして、すべてがとにかく蚕優先の暮らしだったそうです」と井上さん。
アラブ女性があこがれる日本の絹
続いて、市内の羽前絹練株式会社を訪ねました。「精練」ってご存じですか?
生糸から仕上げたばかりの絹織物は、表面にセリシン(たんぱく質の一種)が付いています。これを取り除くことです。これによってシルクの滑らかさが出て、シルクならではの光沢が生まれるのです。
木造の工場内は大変な蒸し暑さ。湯の中に布を何度も漬ける作業を繰り返していきます。おまけに、ボイラーの稼働する音で会話が聞き取れないほどです。
美しいシルク製品が仕上がるまでに、このような重労働を経ていたとは、このときまで知りませんでした。精練後に乾燥させて巻き取った布は、柔らかいシルクならではの手触りになっています。
これを一巻きずつ、人の目で完成度をチェックして、ようやく出荷されていきます。
白い光沢のある反物のなかに、黒い製品が並んでいました。
「これは主に中東に輸出されます。中東の激しい日差しの下で見るとわかるようなのですが、日本の絹織物は外国の製品と比べると黒の輝きが最も優れていると評価されています。女性たちは、日本のシルクで作った服を着ることがステイタスになってるようです」と常務の堀井建雄さん。
「今の経営を支えているのは、中東への輸出」だそうです。
国内外の一流ブランドに信頼されるプリント技術
精練された生地は、市内のプリント工場へと運ばれます。東福産業を訪ねると、女性たちが2人1組になって、斜めの台に向かって上から下へと力を込めて型に合わせてインクを布地におしつけるように染めていました。
これも力のいる作業。しかも、ここも、工場内は大変な蒸し暑さです。
「きめ細かい作業ができ、集中して根気よく仕事ができるのは、女性ならでは」と社長の大和匡輔さん。ムラがでないよう気を配っているはずですが、スピード感があり、テンポよく次々と布が鮮やかな色とデザインに生まれ変わっていきます。
この工場では、どんなに少ないロットからでも、どんなに細かいプリントでも「悔しいから、発注するデザイナーが納得する以上の仕上がりにする」(大和さん)心意気で、仕事をしているのです。この仕事ぶりに、国内外の、その名を聞けばだれもが知っている一流ブランドからの注文が次々と寄せられています。
「きびそ」にかける新しいシルク産業への期待
この大和さんは、「きびそプロジェクト」のリーダーであり、鶴岡シルクの社長も務めています。「きびそをきっかけにして、もう一度鶴岡のシルク産業を盛り上げたい」という強い思いを抱いているのです。
社員の井上敬裕さんは山形県内にあるテレビ局を退社したあと、鶴岡商工会議所の地域資源活用促進事業の仕事をしていました。そのとき「きびそ」と出会い、地元にこんな面白い素材があるんだと気がついたそうです。そんな時、「きびそ」のPR映像制作のアシスタントプロデューサーを担当しました。この映像は世界デビューを意識していることからナレーションはすべてフランス語で、日本語の字幕がついています。ただいまYouTubeで公開中です。
これですっかり「きびそ」に魅了されてしまい、今年の1月に鶴岡シルクを立ち上げる際、参加を決めました。
もう1人の社員、齋藤美紀さんは元々は鶴岡市役所の職員でした。たまたま、同じ課の男性が「鶴岡シルクタウン・プロジェクト推進事業」に携わっていて、政策推進課、商工課、農政課、商工会議所、地域の人々……と鶴岡の人々が団結して「きびそ」を熱く語る姿をみて感動。鶴岡シルクの職員に応募、今年の3月から鶴岡シルクの社員に転職して「きびそ」のために働いているところです。
蚕から縫製まで、一貫してシルク産業を支えてきた鶴岡。今、「きびそ」をきっかけに、新しいシルク産業への飛躍をしたいという思いの人たちの力が集まっています。
「きびそ」のトリビア〈3〉
絹には真珠のような光沢がありますが、なぜでしょう?
蚕の作る繭糸はフィブロインとセリシンの2つのたんぱく質で構成されています。フィブロインだけを抽出、精練したものを生糸と呼びます。絹の独特な光沢はフィブロインが生み出しています。
また、絹の繊維断面はプリズムの形(三角形の棒みたい)をしています。プリズムは光を通過するとき、七色の光を分散させます。これと同じように、絹繊維もいろいろな方向に光が反射するため、いっそう美しい光沢になるのです。
皆さんの「こんなバッグが欲しい!」という意見を発言小町で募集しています。
発言小町のトピはこちらから
⇒「きびそ」でオリジナルバッグを作ります!
ファッションブログでも関連記事が読めます。
⇒「きびそ」の企画を思い立った理由
⇒カイコとの出会い
⇒鶴岡市ってどんなところ?
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