被災地ロケ「頭が真っ白になりました」 染谷将太さん
「ヒミズ」主演 ベネチアで日本人初の最優秀新人俳優賞
ベネチア国際映画祭で主演の染谷将太さんと二階堂ふみさんが最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)をダブル受賞した「ヒミズ」が14日から全国公開されます。
同名の人気漫画を原作に、「冷たい熱帯魚」の園子温さんが、監督・脚本を担当しました。撮影準備中に東日本大震災が発生します。「どんなことをしても、震災を映画の中に取り込まなければならない」と、脚本を急きょ書き換え、被災地でロケも行いました。主演の染谷さんに、小町さんがインタビューしました。
感じたものをそのまま表現
原作者は、「行け!稲中卓球部」の古谷実さんで、単行本は4巻で150万部を超えるベストセラーです。染谷さんが演じるのは、15歳の中学生・住田祐一。母親は男と駆け落ちし、借金を作って蒸発していた父親を衝動的に殺してしまいます…。すんなり感情移入できましたか?
苦労はしませんでした。感情移入というより、感じたものをそのまま表現すればよかったので。園さんから大まかな指示を受けた後は、それを踏まえて自由にやりました。
父や借金取り、二階堂さん演じる茶沢景子との取っ組み合い、池に飛び込んだり、泥だらけになったり、肉体的には大変そうでしたが。
女の子を生まれて初めてビンタしたり、ヤクザに蹴られて吹っ飛んだり。でもあの時は、大丈夫でした。体に聞いてみたら「そろそろやめてくれ」と言っていたと思いますが(笑)。
いつもオリジナル作品を手がける園さんの、初の原作ものと伺いました。
準備稿は、漫画に忠実でした。園さんからは「どんどんお前の芝居にあわせていくから」と言われ、どんな風に変化していくのか楽しみでした。
書き換えられた脚本に感動
そこに3月11日、地震がありました。ストーリーに震災を取り入れると聞いた時はいかがでしたか。
どういう意味なんだろうと思いました。完成版は、大まかな流れは変わっていないんですが、震災があった後の物語として、違和感なく読めました。ラストシーンがとても感動して、ヤバかったです。園さんの映画になっていました。
被災地でも撮影したそうですね。
台本には津波で何もかもなくなったシーンがあって、どうやって撮るんだろうと思っていたら、園さんが「実際に行く」と。現地入りしたのは5月後半でした。衝撃的でした。芝居ができなかったんです。頭が真っ白になって。それが自然なことというか、ウソはないんです。悲しい気持ちもわかなくて、芝居を超えてただそこにいることしかできなかったんです。
日本の若者に贈られた賞
ところで、ベネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞を受賞されました。
ベネチアには行きましたが、受賞は帰国後に知りました。最初は事態が、よくのみこめませんでした。3大映画祭のコンペティション部門に出品されるだけでもすごいのに。撮影現場では、園さんに「お前ら頑張ったらレッドカーペットを歩かせてやる」と言われていましたが、本当に連れて行ってくれたんです。
審査委員長のダーレン・アロノフスキーさんが、「染谷・二階堂の演技は情熱と感情ではちきれんばかりで、青春がスクリーンで爆発しているようだった」というコメントを寄せています。
大好きな監督なので、すごくうれしいです。僕が演じたのは、住田という個人です。同時に、困難に立ち向かう、未来を作っていく日本の若者でもある。震災に見舞われた日本に賞が贈られたことには、大きな意味があると思います。そういう映画になったのは、園さんのおかげです。
ラストシーンの「住田、頑張れ」がとても心に残りました。
「頑張れ」って、個人的には嫌いじゃないんですが、あまり人から言われたくないという人もいます。でもこのシーンは、自分でも納得の行く「頑張れ」でした。やはりいい言葉だと感じますし、相手に伝わった時は、一番強い言葉だと思います。
私も自然に頑張ろうという気持ちになれました。ありがとうございます。
出演:染谷将太 二階堂ふみ 渡辺哲 吹越満 神楽坂恵 光石研 でんでん 窪塚洋介
監督:園子温
2012年1月14日(土)新宿バルト9、シネクイント他全国ロードショー
製作・配給:ギャガ
©2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ
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