Q.1時間単位の有給休暇
育児、介護 効率よく柔軟に活用
年次有給休暇を1時間単位で取得できる「時間単位年休」の制度を、民間企業が昨年から導入できるようになりました。通院や子どもの行事参加など短時間の私用で、1日や半日の有休を取るのはもったいないときに活用できます。効率が良く、気軽に取得できると評判で、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進にも役立つようです。
■制度
「時間単位年休」は、昨年4月の労働基準法の改正で、導入が可能になった。従来、半日か1日単位でしか認められなかった年次有給休暇を、1年に5日分を限度に、1時間単位で取得できる。導入には労使協定の締結が必要だ。
大和ハウス工業(大阪)は昨年5月からこの制度を導入した。有休1日分を8時間とし、年間5日分(40時間分)を1時間単位で分割して休める。今年3月時点で、一度でも時間単位年休を利用した社員は、全体の3分の1にあたる約4200人にのぼる。通院、学校の授業参観、銀行や役所の手続きなどを目的に1か月平均で2・63時間の有休を取っている。
カシオ計算機(東京)も昨年6月に同様の制度を導入した。男性社員(54)は先日、運転免許の更新で昼休み前に1時間の有休を取った。「仕事の合間に私用で抜けるには、半休を取るしかなかった。時間単位で休みを取れると効率的で、時間を持て余すことがなくなりました」
2歳の長女がいる女性社員(37)は、予防接種や保育園の保護者会などの用事で一度に2時間の時間単位年休を利用することが多い。「子どもの急病に備え有休は無駄に使えない。短い単位で取れるのは便利」と歓迎する。
「趣味の野球観戦のため1〜2時間早く終えたいときに重宝しています」と話すのは、別の女性社員(42)。「やるべき仕事はすべて終わらせてから休むので集中力もアップした」と喜ぶ。
時間単位年休は、正社員だけでなくパートの従業員も対象にしたり、半休との組み合わせを認めたりすることも可能だ。一方で、時間管理を労働者の裁量にまかせる営業の現場や、交代制勤務の製造の現場などではメリットがなかったり、導入自体が難しかったりする場合もある。
厚生労働省は今年、民間企業約6000社を対象にした「就労条件総合調査」の中で時間単位年休の導入状況を調べている。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が昨年秋に会社員など約2000人の正規労働者に聞いた調査では、勤務先に時間単位年休が「導入されている」と答えた人は21・3%。「育児や介護などと仕事を両立させたい人のニーズに対応でき、認知度が高まれば、職場環境に合わせて導入する企業はさらに増えるのでは」と同機構の主任調査員、郡司正人さんは話す。
ただし、「年5日が限度内の時間単位年休を上手に活用しながら、本来のまとまった有休もきちんと消化しなければ意味がない」と郡司さん。「たっぷり休息することも忘れないで」とアドバイスする。
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