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企画・連載
家庭面の一世紀

(7)共働き 夫に気を使う

「自負心傷つかないか…」

 作家の生田花世(1970年に82歳で没)=写真=は、1915年(大正4年)秋から約半年間、読売新聞の記者をした。年下の夫、生田春月は売り出し中の文学者。夫婦共働きの記者時代を、後に花世はため息交じりのような文章で振り返っている。

 記者になることを春月に相談すると「好きにしたらいいだろう」。それで、有名婦人を訪ねたり、物価を調べたりする記者になった。ざらざらした原稿用紙に鉛筆で記事をしたため、夕方に出る下刷りを読んで家に帰る。ところが、夫の機嫌が悪い。

 夫から「つかれたろう」「ご苦労だったね」と言われて、優しく迎えられたいのに、夫はむっつりとして、「物をいわない」。

 「何かありましたか」と聞いても「何もない」。

 不機嫌を「知らぬ顔を通して」勤めたが、一緒に働いていた女性記者が辞めたのをきっかけに記者生活を終える。「夫のおもいやりがなくては、妻の外勤はつづかない」(「共稼ぎ―夫の不平」生田花世詩歌全集)

 ちょうどその頃、都市で増えた共稼ぎが話題を集めた。工場や会社で働くサラリーマン層が登場。女性も事務職や教員など様々な仕事で家を離れ、夫婦のあり方が注目を集めていたからだ。

 「よみうり婦人付録」は、15年8月26日から「夫婦共稼ぎ」と題し、与謝野晶子ら12世帯の共稼ぎぶりを取材して取り上げている。

 夫と共に「婦人之友」などの雑誌を発刊していた羽仁もと子は、「妻が働くのは、経済上の問題よりも精神上の要求から」とし、夫と仕事でぶつかって初めて「夫はどういう人であるかがわかる」とする。

 美顔術師、今でいうエステティシャンは「夫は稼ぎが少ないと思われ、自負心が傷つかないか」と心配している。

 9月9日からは「使う側からみた夫婦共稼ぎ」を5回にわたって連載。「人の妻となった女性は何かと心を労するから、未婚の若い婦人を歓迎する」とする逓信省の職場が登場している。

 揺れる価値観の中で、花世の悩みは、彼女だけのものではなかった。

 (敬称略。引用文は仮名遣いなどを改め一部省略)

2009年5月18日  読売新聞)

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