岩手・宮城から投稿 震災見つめ未来に希望
東日本大震災で被災した子どもたちは今、どんな思いを抱いて暮らしているのだろうか。岩手、宮城県の学校や避難所で「こどもの詩」への投稿を呼びかけたところ、40余りの作品が寄せられた。地震や津波の怖さ、これからの生活への思いなどがつづられていた。「こどもの日」に合わせ、選者で詩人の長田弘さんが選んだ詩を紹介する。長田さんも子どもたちへのメッセージを託した詩を寄せてくれた。
詩のテーマは特別に設けず、「子どもたちが今感じていること」を書いてもらった。
詩を書いた子どもたちの住む地域では、津波で家屋が流されるなど大きな被害があった。岩手県大船渡市の
また、作品を寄せてくれた宮城県気仙沼市の気仙沼小学校や岩手県山田町の大沢小学校は、避難所としても利用されている。
「詩を読んで、多くの子が今も不安な気持ちを抱いていると感じました」と大沢小教諭の佐藤はるみさん。子どもたちは、学校では、明るく元気に過ごしているという。「無理に気持ちを言わせるのではなく、今の生活や今自分がしていることを自然に表現することを大切にしていきたい」と話している。
五月の空の下で
長田 弘
五月だよ 五月だよ
どうしたい何をしたい
いいともだちをつくりたい
詩を書くといいよ
そうすれば ことばが
大切なともだちになるから
わかるんだ 詩を書くと
いまじぶんが何を言いたいか
これが言いたいことだったって
日の光降る
こどもの日の
笑い声のなつかしさ
五月だよ 五月だよ
吹き流しのような詩を書こう
風薫る空の下で詩を書こう
つなみとじしん
鈴木 佐和子
じしんとつなみ こわされたいえ
高い所ににげたわたしたちは
電気のないくらやみの中で
もうふにくるまっておたがい声を
かけあって一日をすごした
なんにもなくなった海を見て
おとうさんはためいきをついた
(岩手県大船渡市・甫嶺小4年)
3月11日
佐藤 麻緒
(ゆれが)はじまったとき
ながかったよ
はだしでそとにでたら
あしにすながついたよ
ゆきがたくさんふってきて
さむかった
(仙台市・ワッセ森のひろば保育園年中)
夢かと思った
大町 智生
三月十一日 午後二時四十六分
夢かと思った
正直夢かと思った
家が心配でねむれなかった
正直 夢かと思った
(岩手県山田町・山田中1年)
春が来た
小山 里子
桜がさいた
かだんに花がさいた
チューリップ
たんぽぽ
すいせんなどの
いろいろな
花がさいた
春は
いろいろなものの
スタートなのだ
(宮城県気仙沼市・気仙沼小4年)
大沢小にひなんして
福士 蓮加
津波が来た
急いで高台へにげた
家はこわれて住めなくなった
あれから一か月
生活は変わらない
大沢が平和になればいいな
(岩手県山田町・大沢小5年)
大好きな私のランドセル
大津
大好きな私のランドセル
大好きな水色のランドセル
たった2年でさよならしたよ
大好きな私のランドセル
今日から赤いランドセル
大切な私のランドセル
大じに 大じにつかいます
(岩手県大船渡市・越喜来小3年)
マグニチュード9・0
大上
わたしはこわかった
頭が真っ白になってパニックで
記おくがない
だってね 高い場所にある家
だって流されたんだよ
二か月たってもわすれられない
でも今はみんなのぶんまで楽しく
生きるぜったい生きてやる
(岩手県大船渡市・崎浜小4年)
長田弘さんの評
「やわらかな日差しとともに、新しく花ひらく季節がきています。被災地のみんなからの詩の原稿がしっかりと書かれた字だったことに、いまのみんなの心意気を感じました」
ピックアップ
トップ
|
|