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よみうり子育て応援団

おんぶで八百屋 ママ集う…よみうり子育て応援団大賞

 第5回「よみうり子育て応援団大賞」には、全国から182団体の応募があった。大賞に選ばれた「ほっと村」(東京都北区)は、食と農業を通した子育て支援活動を行っている。奨励賞の「NPOにこにこ劇場こうべママ」(神戸市兵庫区)は、音楽や演劇などの経験がある母親が人形劇やコンサートを開催。「気仙地域子育て支援ネットワークWa―I(わーい)」(岩手県陸前高田市)は、3月の東日本大震災で活動拠点を失いながらも、親子の居場所づくりの活動を続けている。

大賞 ほっと村(東京都北区)

 つややかなナスやトマト、どっしりしたカボチャが並んでいる。新聞紙にくるまれているのは泥付きのニンジンだ。東京都北区。ほっと村が運営する「赤ちゃん八百屋」は、JR赤羽駅近くの商店街の一角にある。

 群馬県甘楽町(かんらまち)の契約農家などから届いた有機野菜や卵のほか、たわしなど東京都の地域産品も売られている。約40平方メートルの店内は、ちゃぶ台が置かれ、子どもを連れた母親らが食事やお茶を取りながらくつろぐことができる。スタッフの中心は、子育て中の母親たち。「幼い子どもがいても社会参加できる場にしたいんです」。そう話す代表の古賀由希子さん(38)は、背中におぶった長女の楓ちゃん(2)をあやす。子どもを背負っての活動を「おんぶ仕事」と呼ぶ。

 ほっと村が誕生したのは2005年。大量に消費し大量に捨てる社会に疑問を抱いていた古賀さんら5人の母親で結成した。子育てのなかで、社会から取り残されたような孤立感も抱いていた。月1回、座談会を開き、悩みを打ち明け、自分たちに何ができるかを話し合った。北区の友好都市の甘楽町で、学校給食の残飯で作った堆肥を利用した有機野菜が栽培されていることを知り、多くの人に広めようと、縁日で野菜を販売することから始めた。

 07年2月、居酒屋の空き店舗で、「食育ひろば」を開設した。有機野菜を使って料理をし、一緒に食べることで母親たちが交流を深める場だ。翌年には、「赤ちゃん八百屋」としてリニューアル。赤ちゃんも集う八百屋という意味を込めて名づけた。昨年11月、現在地に移転。作って食べる「食育ひろば」は近くの公共施設で続けている。

 会員は現在、20歳代から70歳代までの約60人。八百屋の店長を務める篭橋(かごはし)菜々子さん(39)は利用者だった一人。「2人の子どもと家にいると、しかり過ぎてしまう。ここでみんなとご飯を食べ、おしゃべりしていると楽になった」

 食や農業に関する学習会や体験ツアーも行う。今の夢は、北区内に農地をつくり、作物を育てること。子どもたちに自分たちの食べているものが、どうやって育っていくのかを伝えたいからだ。古賀さんは言う。「子育て中でも母親は社会とつながりを持ち、地域のなかで親も子も育つ社会にしたい」

経歴生かし人形劇


■奨励賞 ◇NPOにこにこ劇場こうべママ(神戸市兵庫区)

 シンセサイザーや笛の演奏に合わせて人形がコミカルに動き出すと、子どもたちの視線は舞台にくぎ付けになった。神戸市中央区の公民館の一室。人形や舞台装置はすべて手作り。ピアノ教師やアナウンサーなど多彩な経歴を持つ母親たちが、特技を生かして人形劇の舞台を作り上げていく。

 きっかけは、子どもが通っていた幼稚園のイベントだった。有志が集まって読み聞かせや人形劇をすることになり、伴奏は音楽の経験者、背景はデザイナー、人形を動かすのは元役者の母親らと役割分担をし、好評を得た。2006年に前身となる「にこにこ劇場こうべママ」を結成、08年に非営利の団体であることを示す「NPO」を付けた。

 メンバーは33歳〜48歳の10人の母親。地元の幼稚園や小学校などで、絵本の読み聞かせや人形劇を披露する。その時間は、子どもたちにとって同年齢の友人と出会う場にもなっている。年間の公演回数は約50回。

 代表の國本ひろみさん(48)は「それぞれ結婚までは自分のために活動していたが、今は子どもと一緒に楽しむことが目的。子育て中の母親に見てもらい、『お母さんでもできることがある』と感じてもらえるような活動を、しっかりと継続していきたい」と話す。

集いの場 震災の今こそ


■奨励賞 ◇気仙地域子育て支援ネットワークWa―I(岩手県陸前高田市)

 東日本大震災で壊滅的な被害を受け、更地が広がる岩手県陸前高田市。プレハブの飲食店の一室から、音楽と子どもの歓声が聞こえてきた。「気仙地域子育て支援ネットワークWa―I」が再開にこぎつけた「おやこの広場 きらりんきっず」だ。

 昨年7月から市の委託を受け、駅前の商店街で親子の集いの広場を開設した。地域の子育ての拠点として根付き始めていた3月、津波で建物が流された。スタッフや利用者の多くも自宅を失い、バラバラになった。

 「こんな時だからこそ、親子のための場所が必要なんじゃないか」。夫を失い3人の子どもと市内の実家に身を寄せている代表の伊藤昌子さん(43)は、悲しみを抱えながらも避難所になった中学校に相談し、4月に図書館で広場を再開。足を運んだ母親たちに少しずつ笑顔が戻った。その後、知り合いの男性が仮設店舗の一室を広場として提供してくれることになり8月、3か所目のスタートを切った。広さは14畳ほど。全国から寄せられたおもちゃが並ぶ。スタッフ3人とともに、活動を続ける。

 住む場所や仕事がないため子育て世代が市外に流出している。「多くの大切なものを失ったが、地域の力でもう一度、子育てがしやすい高田にしたい。少しでもこの場所が役に立てば」。伊藤さんは願っている。

子守唄800曲紹介


■選考委員特別賞 ◇NPO法人「日本子守唄協会」(東京都台東区 西舘好子理事長、4人)

 子守唄を日本の文化遺産と位置づけ、記録・保存・伝承や研究を目的に2000年に発足した。寝させ唄や手まり唄など多彩な歌詞や楽譜、歌声を収めたテープを、全国を巡って集め、ホームページで約800曲を紹介している。

 歌うことで心が静まり、親子の絆も深まるという子守唄の力を説き、CDや書籍、児童虐待防止に向けたDVDを製作。各地で開くコンサートや講演会などは年間100件を超える。東日本大震災後は被災地の学校などを訪れ、支援活動にも力を注ぐ。演劇プロデューサーで理事長の西舘さんは「今後も地道に取り組み続けたい」と話す。

障害、世代超え音楽


■選考委員特別賞 ◇NPO法人「町田楽友協会」(東京都町田市 菅谷マスミ理事長、24人)

 「子どもにも音楽の楽しさを知ってほしい」。1993年、音楽大学出身の菅谷さんと姉の土井美智代さんらがジュニアオーケストラを発足させたのが始まり。活動の中心は、子どもや高齢者らが障害の有無や世代を超え、音楽を通じて交流する「バリアフリーオーケストラ」だ。

 現在は大人24人、子ども約30人が所属し、東京交響楽団のメンバーも参加する。合奏の際には、障害のある子どもが演奏しやすいよう曲を編曲し、点字の楽譜も作るという。菅谷さんは「音楽の前では皆、平等。努力することの大切さや達成することの喜びを子どもたちに伝えたい」と言う。

2011年10月9日  読売新聞)

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