「痛み」「生死」を共有 画家松井冬子さん
横浜市西区の横浜美術館で開催中の「松井冬子展」(読売新聞社後援)の来場者が昨年12月に開幕してから1か月余りで2万人に迫る勢いだ。注目を集める松井冬子さん(38)とはどんな画家なのか。(岩島佑希)
「『痛み』とは一人ひとりが持つ孤独なもの。でも、視覚で表現したら共有できるのではないか」
「痛み」「狂気」「生と死」などをテーマに幽霊や内臓をさらけ出す女性などを描く松井さんはそう語る。
松井さんは、自然に囲まれた静岡県森町出身。小学4年生の頃、図書室の入り口に掛かっていた「モナ・リザ」の複製画に出会う。廊下を行ったり来たりしても、笑みを浮かべるモナ・リザと目が合うことに「なんて不思議な絵だろう」と思った。その「恐ろしいけど美しい」レオナルド・ダ・ビンチの作品に引き込まれ、芸術家を目指した。
「絶対に芸術家になる」と決め、女子美術短期大学を卒業後、4年間の浪人生活を経て、東京芸術大学に合格した。短大卒業後、生活費と予備校の授業料を得るため、会社員となった。昼間働き、夜に予備校に通う生活を2年間続け、さらに2年間、奨学金などを得て、受験勉強に集中した。「会社勤めのときは絵が描けない状況が続いてつらかった。だから、誰よりも早く予備校に行って誰よりも遅くまで絵を描いた」
東京芸大入学後、勉強から解放されると思ったが、入学者は全国の精鋭25人。「誰にも負けないくらい勉強しないと」と思った。好きな言葉は「努力と根性」。厳しい父の言葉で、体に染みついているのだという。
アイデアは、リラックスしている無心のときにひらめく。アイデアを構築するため、とことんリアリティーを追究する。内臓は、解剖の本を見たり、イタリアの動物解剖博物館の精巧な内臓の模型を何週間もかけてスケッチしたりした。
「芸術家とは、常に新しいものを求め、人に簡単に理解されるようなものであってはならない」と語る。
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