アメリカ共和党を牛耳る「保守派」って何?
「家族」に関わる問題で、伝統的価値観を唱える人たちが代表格
アメリカ大統領選の共和党予備選で、「保守派の影響力」が指摘されるが?
米国の「保守派」には、いろんな種類がある。「小さな政府」と財政均衡を目指す「財政保守」もいれば、安全保障政策面でのタカ派もいる。
ただ、最近は、キリスト教右派が勢いを伸ばしたため、「家族」に関わる問題で、伝統的価値観を唱える人たちが増えた。この人たちは、財政政策でも安保政策でも保守的なので、彼らが「保守」の代表格になった。
何を求めているのか?
こうした保守派は、人工妊娠中絶がキリスト教の考えに反するとして、その「禁止」を求める。同性愛者同士の結婚も認めない。銃規制にも反対だ。日本や欧州の「保守派」とは全く異なる主張を持っている。
アメリカは政教分離ではないのか?
政教分離は、憲法修正第一条(1791年)以来の国是だ。共和党内には、キリスト教の影響力が強まることを嫌う人もいる。予備選をリードするミット・ロムニー氏も、こうした「穏健派」だ。だが、保守派は穏健派を嫌うので、ロムニー氏はなかなか保守層の支持を伸ばせない。
保守派はどれくらいいるのか?
世論調査「ギャラップ」社が2011年8月に行った調査によると、米国の有権者の11%が自らを「非常に保守的」とした。30%が「保守的」と答えた。つまり、米国民の4割が「保守」だ。共和党支持層(有権者の約3割)に限ると、71%が自らを「保守」と位置付けた。各種の世論調査では、保守派の8〜9割が白人(米人口の64%)だ。ヒスパニック系(同16%)やアフリカ系(同12%)の間では、「保守派」は圧倒的に少ない。
保守派は政権を握ることが出来るか?
共和党内では、保守派の影響力は圧倒的だから、ロムニー氏が党の候補者として指名を獲得するには、相当な譲歩が必要だ。だが、保守色が強すぎると、民主党支持層はもちろん、中間層にも食い込めない。保守派が前面に出ると、11月の投票では勝てないだろう。
(編集委員兼東京大学教養学部客員教授 伊熊幹雄)
(2012年1月18日 読売新聞)
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