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企画・連載
みなおす消費

4)応援買い 身の丈に合わせ

震災後、支える意識根付く

岩手産のリンゴなどが並ぶ「がんばっぺ東北 うまいもん市」。毎回楽しみにしている常連客も(兵庫県尼崎市で)
南部鉄器のコーヒーポットや仙台の玉虫塗の箸などが人気(東京・北青山のRinで)

 東京都内で調理機器の販売会社を営む渡辺直子さん(56)は11月、福島市の温泉旅館「ひげの家」に夫と宿泊した。「紅葉もお湯も楽しめた」と満足そうだ。

 この旅館に泊まることは、5月に決めていた。東日本大震災後、宿泊客が激減した宮城、福島の温泉旅館6軒を支援する「旅館サポーター制度 (たね)」に登録し、「将来の宿泊料金」の一部として、1万円を前払いしていたのだ。

 旅館からは、「お越しになる日までがんばります」と手書きのメッセージが届いた。9月に日程を決め、宿泊時は「おかげさまで今日は満室」と笑顔で歓迎された。帰宅後、宮城県の旅館に来春宿泊したいと考え、料金を前払いした。

 「種」のサポーターは現在、約200人。事務局の丹羽尚彦さん(42)は、「旅館に泊まってその土地のものを食べ、土産を買うことで、地域全体を支援できる」と話す。前払い金は1口5000円で、2014年3月の期限までに宿泊できなかった場合は旅館への寄付となる。

 「これなら支援する人の顔が見え、肩ひじ張らずに応援できる」と渡辺さん。同様の思いから、津波の被害を受けた三陸のカキ養殖の復興支援プロジェクトにも協力。出荷再開前のカキを1口1万円で前払いして購入した。来春にも届くのを楽しみにしている。

 震災後、被災地の産品や企業を支援する「応援買い」が、様々な形で広がっている。

 兵庫県尼崎市で、4月から月1回のペースで開かれている「がんばっぺ東北 うまいもん市」も、その一つ。今月1日の市では、岩手県のリンゴやお菓子、福島県のキノコなど30〜40品が並んだ。

 運営するのは、兵庫県明石市の一般社団法人で、農作物のネット販売支援などに取り組む「農家の売り子プロジェクト」。代表理事の小豆(あずき)佳代さんは、「商品のファンになってもらえば、長期の支援につながる」と話す。

 常連の主婦、森脇結加里さん(37)は、「被災地を支えたいという思いだけでなく、わざわざ来て買いたい商品が多い」と話す。例えば、岩手県普代村の精肉店が作る昆布入り焼き肉のタレ。「あまりにおいしくて知人にも薦めた」という。

 市の開設は1年間がめどだが、今後も注文できるようにと連絡先を書いたチラシを商品と共に手渡している。

 岩手や福島などの伝統工芸品も人気だ。東京・青山の専門店「Rin」では、南部鉄器や会津塗など東北の工芸品が売れ筋の上位を占め、比較的高額な商品もよく売れている。「東北の伝統工芸を支えていきたい、という人が多いようです」と、同店マネジャーの植村妙子さん。

 かつてない規模と多様さで、進化を続ける「応援買い」。博報堂生活総合研究所主席研究員の吉川昌孝さんは「身の丈に合った消費を通じた支援は、今後も根付いていくのではないか」とみる。自分が何をどう買うことで、社会にどんな影響を与えるか。そんな意識を持つ消費者が、増えていきそうだ。(おわり)

 (鳥越恭、前田利親、谷本陽子、岡本久美子が担当しました)

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2011年12月13日  読売新聞)

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