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中年男が腹をへこますには

研究員の顔ぶれ

調査研究本部主任研究員 笹島 雅彦

 鍛え上げた筋肉のたくましさを競うボディービルの神奈川県大会と関東大会がこのほど、横浜市内で開かれ、見学する機会があった。筋骨隆々とした選手がポーズを取っている姿をテレビ画面で見たことはあるが、実際に自分の目で確かめるのは初めてのこと。筋力トレーニングの手ほどきを受けているトレーナーの今井準さん(27)に誘われて、出かけてみた。

 「欧米では盛んだが、日本ではまだ、マイナー・スポーツ」(今井さん)だそうだ。だが、大会会場をのぞいて驚いたのは、若者よりも中高年の出場選手たちが圧倒的に多いことだった。神奈川県のトップクラス13人の内訳は、30歳代3人、40歳代8人、50歳代2人。関東大会のトップクラス32人の場合、20歳代3人、30歳代10人、40歳代17人、60歳代2人という年齢構成になっている。マスターズ部門出場の最高齢者は76歳だ。いずれも、厚い胸板と広背筋、左右に三つずつ割れた腹筋(いわゆる「シックス・パック」)を誇る選手たちで、まるで、古代ギリシャの彫刻が一堂に並んでいるようだった。

 50歳代の筆者は、数年前まで、身長169センチ、体重74キロという典型的メタボ体形で、ご多分に漏れず、ズボンのサイズが年々、広がるばかりだった。運動不足を反省し、自己流のランニングなどで、一応、体重を60キロまで落とすことには成功した。しかし、鏡に映った自分は、貧弱な体格におなかだけがぽっこり出ているというぶざまな姿。「これではダメだ」と、がく然とした。

 そこで、この1年間、今井さんのアドバイスを受けながら、筋トレと食の改善に取り組んだ。「体作りのためには、最初に筋力を付けていくことが大切です。これが実は難しい」と、今井さん。食事は、「高たんぱく質、低カロリー」を心がけ、朝からお肉をもりもり食べた。単にカロリーを減らすだけのダイエットや、腹筋の回数を増やすだけの運動ではうまくいかない。筋トレの運動量に合わせ、3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の配分を考えながら食べるようになった。日常生活では、体の軸を意識し、操り人形が脳天から真上に引っ張られるような立ち姿を目指した。体脂肪の燃焼率を高め、ひざに負担をかけないためには、ランニングよりウオーキングの方が良いそうだ。

 要は、運動、食事、姿勢の改善が肉体改造のポイント。ボディービルの練習法に従って、十分に筋力をつけてから、食事内容をさまざまに変え、体脂肪をそぎ落としていく努力を続けた。今では、手足に筋肉がある程度つき、体重60キロで、体脂肪率13%台にまで改善した。以前は体脂肪率が20%台からなかなか落ちなかったが、今ではおなか周りもスッキリした。

 そういえば、約2年前、バスケットボールを趣味とするオバマ米大統領(50)が休暇中に家族と一緒に海水浴する姿や、柔道の心得のあるプーチン露首相(58)が上半身裸で乗馬する姿の写真をみると、どちらもシックス・パックのおなかだった。米国には「マッチョ」(外形的な男らしさ)を尊ぶ政治的風潮がある、と指摘する米国人政治学者もいる。日本の政治文化ではちょっと考えられないが、欧米においては、肉体的な力強さは政治指導者の資質の一つかもしれない。きっと2人は、人知れず、筋トレに励んでいるに違いない。

2011年9月22日  読売新聞)

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