staycation 安上がりな休日
英語の世界では次々と新語が生まれていますが、最近目立つのは、安上がりな旅行や金のかからない休日の過ごし方に関する言葉です。
代表的なのは staycation(ステイケイション)でしょう。stay(とどまる)と vacation(休暇)を組み合わせた造語で、アメリカの辞書メリアム・ウェブスターにもすでに載っています。
そのオンライン版を見てみると、次のように定義しています。
a vacation spent at home or nearby
自宅または近場で過ごす休暇
休日に遠出をせずに、自宅や近場の公園で過ごしたり、地元の美術館や観光地を訪れたりする場合に使うわけです。
この言葉は2005年ごろ、アメリカ英語で使われ始めましたが、今ではイギリス英語でも用いられています。
使用例を見てみましょう。例えば、2008年8月のカナダ紙トリビューン・エクスプレスには次のような記事がありました。
Staycations have become more and more common. Not everyone has the time or money to invest in a long faraway trip.
ステイケイションはどんどん広まっている。遠くまで長い旅行に出かける時間やお金は誰にでもあるわけではないからだ。
最近の例では、米紙ザ・マーキュリー・ニューズの電子版(2011年12月)に、こんな見出しの記事がありました。
Staycation specials: Restaurant, lodging deals in Napa Valley
ステイケイション特集:ナパバレーでおすすめのレストランと宿
(deals は「お買い得の品」「掘り出し物」ほどの意味です)
この言葉はアメリカ生まれでしたが、イギリスではほかにも金をかけない旅行や休日の過ごし方をめぐる様々な新語がお目見えしています。
イギリスの辞書マクミランのオンライン版は以下のようなバズワード(はやり言葉)を紹介しています。
例えば、paliday(パリデイ)。「友達」や「同僚」を意味する pal と「休日」を意味する holiday を一緒にした言葉で、「(ホテルではなく)友達の家などに泊まって 過ごす休日」のことを示しています。
似たような単語に daycation(デイケイション)があります。day と vacation を組み合わせた言葉で「日帰り旅行」を意味します。
minibreak(ミニブレイク)や nanobreak(ナノブレイク)という言葉も生まれました。「休憩」「短い休暇」などを意味する break の前に、mini(小さな)や nano(すごく小さな)を冠 した単語で、minibreak は2泊3日、nanobreak は1泊2日程度の休暇を指しています。
minimoon(ミニムーン)なんていう新語も出てきました。mini(小さな)とhoneymoon (新婚旅行)を組み合わせた言葉です。欧州ではハネムーンといえば、以前は2週間くらいが当たり前でしたが、ミニムーンはそれよりずっと短いハネムーンに使われるようです。
こうした言葉がはやるのは、ヨーロッパやアメリカでは金融危機や経済不振、ガソリン代の高騰などで、みんなが財布のひもを締めようとしているからです。
特にヨーロッパではユーロ安もあって、外国旅行に出かける余裕はますますなくなってきています。
この分野の新語はまだまだ出てきそうです。
筆者プロフィル | |
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大塚 隆一
1954年生まれ。長野県出身。1981年に読売新聞社に入社し、浦和支局、科学部、ジュネーブ支局、ニューヨーク支局長、アメリカ総局長、国際部長などを経て2009年から編集委員。国際関係や科学技術、IT、環境、核問題などを担当
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- occupy アメリカの流行語大賞 (1月18日)
- staycation 安上がりな休日 (1月6日)
- God particle 科学が神を持ち出す時 (12月22日)
- wave and pay おサイフケータイの国際化 (12月7日)
- mercantilism 新しい重商主義の時代 (11月25日)
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- Steve Jobs 彼は何者だったのか (10月13日)
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