独創力のアントワープ
パリ、ミラノ、ニューヨーク、そして東京。こうした大都市と並び、ベルギーのアントワープは1980年代後半以降、ファッション界で注目を集めてきた。
この街でファッションを学んだデザイナーたちが、独創的な装いを次々と発表し、流行に大きな影響を与え続けているからだ。
しかし、人口50万に満たない小さな街がなぜ? 28日まで東京オペラシティアートギャラリーで開かれている「6+アントワープ・ファッション」展が、そんな素朴な疑問に答えてくれる。
ドリス・ヴァン・ノッテンなど「アントワープ6」と呼ばれ、アントワープを代表する6人のデザイナーから最近の若手までの作品約60点を展示。その多彩な美意識に目を見張る。例えば、マリナ・イェーの花柄を組み合わせたドレスは立体絵画のよう。マルタン・マルジェラのコートは、頭を包むような高い襟が存在感を放つ。いずれも、既存の服とはひと味もふた味も違う。
こうしたデザイナーたちの孵化器としての役割を果たしてきたのが、美術大学のアントワープ王立美術アカデミーのファッション科。アントワープ出身の多くのデザイナーがアカデミー出身で、新入生の5、6人に1人しか卒業できない厳しさで知られる。3年前アカデミーを首席で卒業したデザイナーの坂部三樹郎さん(33)も「他人といかに違うファッションを創造するかを徹底的にたたき込まれた」と話す。
展覧会を監修した文化女子大教授の高木陽子さんによると、90年代以降、市場調査を重視した服作りが主流となり、流行が均一化する中、デザイナーの個性に重きを置いたベルギーファッションの独自性が一層、際立つ形になった。
今回の企画展は、アントワープファッションの魅力だけでなく、デザイナーの主張を強く刻印したファッションの可能性も感じさせてくれる。(生活情報部 谷本陽子)
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