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08 松井秀喜

(8)復帰の日へ地道な一歩

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フロリダ州タンパでフリー打撃を始めた松井秀(12日)=小金沢智撮影

 左ひざ痛で故障者リスト(DL)に入り、フロリダ州のマイナー施設で治療と調整を進めている。12日、曇天のタンパ。6月24日以来初めて、屋外でのフリー打撃を行った。紺色のハーフパンツのすぐ下、左ひざ周辺はサポーターで保護している。とはいえ、18日ぶりとは思えない強い打球も放った。

 切りよく55スイング。「ステップがちょっと上がったかな。あとは、痛みさえ出てくれなければ」。治療、トレーニングからティー打撃、トス打撃、そしてフリー打撃へ。復帰に向け、また一段階段を上った。数日後には、走るという単純だが最も痛みの生じやすい動作を取り入れ、患部の反応を探る。15日の本番に向け、華やかにオールスター色を強めていく本拠地ニューヨークの1800キロ南で、実に地道な毎日が続く。

 前半戦。求めていた名誉と絶対の存在感に近づき、届かなかった。

 来年は新球場ができる。慣れ親しんだヤンキースタジアムで球宴に出るチャンスは今季が最後だった。「出たい」。珍しく公言してはばからなかった。ファン投票では、レッドソックスのオルティスに大差をつけられたが、選手間投票という道があった。首位打者争いに絡んだ打率3割2分3厘。「このままのペースで行けば」。可能性は感じていた。しかし、24日から欠場し、DLにも入ったことで、それは消えた。

 「過去の自分ではなく、あくまで今年の自分というものが大切。ジーターとか、A・ロッド(ロドリゲス)というわけじゃないから」。ポジションの保証がなかった今春。覚悟を決めていた。右ひざの手術明け。新監督。自分の存在を押し上げるには打つしかない。開幕は8番。ここから5番に戻った。故障者や不振で打線が低迷する中、4月から5月にかけて自己最多の17戦連続安打と気を吐いた。

 結果は出した。ゼロからではもちろんないが、それもまたやり直し。キャッシュマンGMは言う。「ヒデキがいないのは痛い。ただ、我々に必要なのは丈夫なヒデキなんだ」

 現スタジアムでの球宴は永久にかなわないが、もう一つは自分次第だ。後半戦は18日から始まる。なるべく早く復帰して、再び安定感を見せられるか。(小金沢智)

2008年7月15日  読売新聞)
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