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「夢みたい」松井歓喜…MVPに日本興奮

 日本球界から海を越えて7年、「ゴジラ」がけがを乗り越え、日本人初の金字塔を打ち立てた。米大リーグ・ワールドシリーズでチームを9年ぶりの優勝に導き、4日(日本時間5日)、最優秀選手(MVP)に選ばれたヤンキースの松井秀喜選手(35)。試合後のインタビューでは「夢みたい」と喜びをかみしめた。9月にマリナーズのイチロー外野手(36)がメジャー史上初の9年連続200本安打を達成したばかり。米球界に語り継がれる打者にまた日本人が加わった。

「頼もしい男」「涙出る思い」

 九回表、フィリーズ最後の打者が内野ゴロに倒れると、指名打者の松井選手は07〜08年に手術した両ひざをいたわるかのようにベンチを出て、マウンド近くの歓喜の輪に加わった。二回に先制2ランを放ったときも表情を変えなかったが、MVPの授賞式では、両手でトロフィーを掲げたあと、左手で小さくガッツポーズして表情を緩めた。

 この日、松井選手の父昌雄さん(67)と母さえ子さん(59)はスタジアムの一塁側2階席で見守った。「今日は寒くなるから風邪を引かないようにね」。松井選手は試合前、両親の宿泊先のホテルを訪れ、こう気遣っていた。試合を終え、昌雄さんは「契約最後の年でプレッシャーもあっただろうが、最後に最高の結果を出せた」と感慨にふけった。

 「人のできないことをやる頼もしい男。本当に素晴らしい野球人になった」。母校の星稜高(金沢市)では、山下智茂・野球部総監督が目を細めた。

 スポーツジャーナリストの二宮清純さんは「大変な金字塔。1977年、ヤンキースを久々のワールドチャンピオンに導いたレジー・ジャクソンは10月に強いことから『ミスター・オクトーバー(10月)』の異名を取ったが、この日の松井はまさしく『ミスター・ノーベンバー(11月)』と呼ぶにふさわしい活躍だった」と興奮気味に話した。

 巨人・長嶋茂雄終身名誉監督「MVPに選ばれた松井の笑顔を見て涙が出るほど、うれしさがこみ上げてきました。今シーズンもコンディションに不安を抱えながらプレーしていたようですが、最高の形で報われましたね」

 巨人・原辰徳監督「ワールドシリーズ制覇を目指して巨人から海を渡り、その夢を実現し、目標を達成しました。我々も喜んでいますし、本人も達成感を味わっているでしょう。巨人も日本シリーズで頑張りたいと思います」

「きょう頑張る」父にメール

 【ニューヨーク=小金沢智】〈きょう頑張るから〉。自らのバットで優勝を決めた第6戦の試合前、松井選手は客席の父、昌雄さんにメールを送った。

 この日は4打数3安打の6打点。「何かの力が働いたんだと思う」。神懸かったような勝負強さだった。

 2006年に左手首を骨折、07年は右ひざを痛め、2年続けて戦線を離脱。昨年は古傷の左ひざが腫れた。一度は決まった軟骨除去手術延期を球団に認めさせ、強い炎症止めを胃薬と一緒に毎日飲んで計2か月のリハビリを乗り越えたが、プレーオフ進出を逃した。

 今季は指名打者専門。守備につけず、46試合で先発落ちした。それでも、「気持ちが切れたら終わり」と言い聞かせ続けた。

 「家族には感謝している。いつも支えてくれる」。松井選手は語った。結婚した昨年、婚姻届を出した日に本塁打を放った。妻の願いで探してもらったボールには、「2008年第1号 婚姻届提出日 4月4日」と記して保管してある。この年は故障で心配をかけたが、MVPは埋め合わせに十分な贈り物となった。

2009年11月6日  読売新聞)
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