【上】「特別な存在だった」トーリ待ち望んだ再会だった。 11月9日、ニューヨークでジョー・トーリ氏が主催した慈善パーティーに出席した。自身のヤンキース入団以来の指揮官は、来季から時差3時間の西海岸で、リーグの違うドジャースを率いると決まっていた。 控室で握手、抱擁を交わした。 「ロサンゼルスに行くことになった」 「向こうへ行っても頑張ってほしい」 シーズン終了から32日。退任決定から22日。「最後に会って、5年間一緒にやった感謝の気持ちを伝えたかった」 松井にとってトーリは、「特別な存在だった」。なぜか。昨年5月、左手首骨折で途切れるまで連続試合出場を後押しした。右ひざが悪く、状態の上がり切らない自分を今季のプレーオフでも使い続けた。それらは表面上のことに過ぎず、根底は野球観の一致という信頼で結ばれている。 よく聞いた言葉、そして忘れない言葉がある。「ヤンキースは相手に勝ちを取られるんじゃない。我々が負ける時は、勝ちを与えてしまうんだ」。いくら個々の能力が高くても、油断や準備不足が状況に応じたプレーの確実な実践を阻んでしまう。プロ意識を説いたものだ。 松井も思う。「選手1人ができることは限られている。全打席本塁打でもそれ以上、点を取られると負けてしまう。チームスポーツの中では力の相乗効果というか、(個々が)うまく反応して全体的な力が出る」。個人で勝つには限界がある。まずは各自が結果の前に、自分の「やるべき事」に集中することが肝要だ。 例えば敗退したプレーオフ。スイングの精度に欠け、11打数2安打だったが、ボールの見極めは貫いた。5四球がもたらした出塁率4割3分8厘は打線でトップだ。 「あいつは勝つためにチームメートを助けるために、やるべき事の重要性を分かっていた。これは人から教えられて身につくもんじゃない」。これはトーリが最後に語った松井評だ。 「互いの理解は深かったと思う」。そう言いながら松井はわざわざ前置きした。「監督(と選手)の域は出ないけど」。プロの敬意はなれ合いとは違う、ということだ。「まだ続けてほしいという気持ちはあった。でも、気持ちがすっきりしない中で指揮を執るのは良くない。一番納得する形になってくれればいいと思っていた」 複数年ではなく1年プラス出来高の続投条件に対して「信頼の問題」と、チームを去ったトーリの選択を松井は今、静かに受け入れている。(小金沢智) (2007年11月30日 読売新聞)
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