【下】手術…リハビリのオフビンの中には大きな軟骨が入っていた。右ヒザから取り出された破片は最大で、半径1センチ程度もあったろうか。妙に納得させられた。「本当に大きな軟骨がはがれていて、関節の中をびゅーっと動いてた。これはヒザを曲げ伸ばしするのに、邪魔になるなあって」 11月14日、ニューヨーク市内の病院。内視鏡手術を受け、はく離したものは除去し、傷ついた軟骨はなめらかにした。6月下旬から発症した痛みと腫れ。その原因を、文字通り目の当たりにした瞬間だ。 翌々日からリハビリをほぼ毎日続け、患部周辺から下半身を鍛えている。腫れはまだ少しあるそうだが、「ヒザの中の痛みは感じてない」。治癒への感触は確かに感じつつある。 同じ診断ながら、全く違う処置法を提示してきた医師もいた。骨に穴を開ける大がかりな手術で、6週間ギプス、完治に半年。来季に間に合うか、といったどころではなかった。今の段階では、最悪の事態は避けられたと言っていい。 ただうっすらと、かすみがかかったオフではある。 「また痛みが出ないか、本当に良くなったのか」。当然、選手としての不安は霧散しない。何より野球の動きの中でしか、完治への手応えは測れない。 もっと根本的なこともある。人工芝の多い日本の球場で10年プレーした影響か、軟骨はく離の要因は“勤続疲労”と見られている。春には左太もも裏の筋肉を痛めた。昨年は左手首を骨折している。 ショックはない。「若いころから、自分がこのままけがもせず、どこも痛くなく野球をやれるとは思ってなかった。何が起きても不思議じゃない、という心の準備は常にあった」 走力、遠投力、長打力。自分の能力にかげりが出た感触も全くない。 それでも思う。故障が続いたここ2年で130試合に欠場した。日米通算で1768試合に連続出場した自分の中で今、何かが変わり始めているのかもしれない。来年は34歳。「いろんな事を考えていかなきゃいけない年齢に来てるのかな」 この時期は毎年、「一度初心に戻って冷静に、客観的に自分を見て、来年へのプランを少しずつ考えていく」という。そこに新たな要素が加わった。体重を減らす、トレーニングを修正する、食事を含めた生活習慣を見直す――。今の自分の体に適するものは何か。そもそも本当に、自分の体は転換期を迎えているのか。じっくり考え、必要な選択肢を探るつもりだ。 手術して迎えるオフは初めて。リハビリも続く。バットは振れなくても頭の中ではもちろん、打撃改良のイメージトレも続ける。 求めるのは今よりベターな自分。例年より、さらに深い思索のオフとなる。(小金沢智) (2007年12月1日 読売新聞)
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