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里親力こそ傷癒やす…福岡市がNPOと連携、登録急増

 「家族と暮らせない子どもに温かい家庭を」。虐待などで保護された子どもを、こうした合言葉のもと、親代わりになる里親へ積極的に委ねる福岡市の取り組みが注目されている。

 福岡市の江川隆さん(66)と直美さん(60)夫婦は、1歳から高校2年までの5人の里子と暮らしている。子どもたちが学校から戻ると家は一気ににぎやかになり、近所の子らも顔を出す。そうした様子を2人はニコニコと見守る。

 夫婦が里親になったのは6年前。今春からは、経験ある里親が補助者の助けを得て5、6人の子を養育する「ファミリーホーム」になった。これまでに一緒に暮らした里子は短期も含め計12人になる。

 直美さんは「色々な問題を抱えた子がいて大変なこともあるが、やめたいと思ったことはない。傷を癒やし将来幸せになってくれたらうれしい」。隆さんも「子どもの成長を見るのは楽しい」と言う。

 福岡市が里親推進に乗り出したのは2005年。全国的に虐待や親の病気などで保護される要保護児童が増えるなか、市内の乳児院や児童養護施設が満杯となり、県外施設へ預ける事態になっていた。

 同市の児童相談所は里親を増やすため、NPO法人「子どもNPOセンター福岡」に協力を依頼。市民に里親の役割を知ってもらうフォーラムや出前講座など、普及啓発事業に連携して取り組んだ。同法人事務局長の宮本智子さんは「家族と暮らせなくなった子が、地域や友達からも離されて遠方の施設へ行くと知り驚いた。現状を市民に知らせねばと思った」と話す。

 その結果、毎年3、4世帯だった里親の新規登録が05年度は13世帯と急増。以降も年々増え、里親の登録総数は43世帯(04年度)から85世帯(10年度)へ、里親に委託された子ども数も27人から105人へと大幅に増えた。

 里親が増え、別の発見もあった。表情が乏しく他人との交流が難しかった子が、里親宅に移り半年後、里親に甘え無邪気に遊ぶ「普通の子」に変化していた。「愛情を注いで育てる里親の力」を同市児童相談所の職員らも再認識したという。

 同相談所所長で精神科医の藤林武史さんは「傷ついた子には一対一のきめ細かいケアが大事だと教えられた。里親は委託後のフォローなど手間はかかるが、集団生活に合わない子が増えており、もっと広げていきたい」と話す。

 同相談所は里親担当の専任職員を4人置き、相談や交流会、里子の一時預かり、家庭教師のボランティア派遣など里親支援の拡充も進めた。「いつでも相談できるから安心」と江川さんらも言う。

 福岡市をはじめ、この数年で里親への委託を大きく伸ばした自治体の取り組みを調べた厚生労働省家庭福祉課は〈1〉里親担当の専従職員を置く〈2〉里親支援を充実させる――などが普及のポイントとみる。

 里親が普及した欧米の事情に詳しい京都府立大教授の津崎哲雄さんは「福岡市は市民や関係機関と上手に連携した里親推進のモデル」という。「日本でも本格的に増やしていくため、自治体が経験を蓄積した里親専門職員を育て、24時間対応の相談事業といった支援体制を整えていくことが欠かせない」と話す。

 里親 親と暮らせない18歳までの子どもを自治体から委託されて育てる。養育中は手当や養育費が支給される。全国で保護された約4万7000人のうち、里親へ委託されるのは1割と低く、9割が児童養護施設や乳児院などで暮らす。

2011年10月30日  読売新聞)

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