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東電の電力料金値上げで注目される企業

 東京電力は1月17日、4月から実施する企業向け電気料金の引き上げ幅を平均で17%とする方針を発表した。企業は今後、自家発電の増設や独立系電力事業者(IPP)の活用をこれまで以上に推し進めるであろう。

1.東電管内の企業に対する電気料金値上げを発表

 東京電力は1月17日、4月から実施する企業向け電気料金の引き上げ幅を平均で17%とする方針を発表した。福島第一原子力発電所の事故に伴う費用増や、火力発電所の燃料コスト増で悪化した収益構造を改善させることが主な目的とみられる。

 値上げ対象は、契約電力が50キロワット以上の工場やオフィスなど約24万件。現行の電力量料金単価に対し、大規模工場や百貨店などでは1キロワット時あたり2.58円、中規模工場やスーパーなどは同2.61円の値上げとなる模様だ。



2.企業は自家発電やIPPへの乗換え、節電等で対応か

 同料金値上げは、対象となる企業全体で約4000億円の負担増になる見通しだ。グローバル競争が激化する中で、海外よりも割高な電気料金がさらに値上がりするのだから日本企業にとっては頭が痛い問題である。

 すでに、こうした流れを見越して自家発電設備の導入を進めている企業もある。例えば、本田技研工業は埼玉県に建設中の工場に大規模な太陽光発電設備を設置するほか、富士重工業も群馬県太田市の工場に今夏を目処に自家発電設備を導入する予定だ。同様に、化粧品のコーセーも7月を目処に数百億円を投じて群馬県の工場に自家発電装置を導入する予定である。

 一方、独立系発電業者(IPP)や電力小売の新規参入組である特定規模電気事業者(PPS)と取引を増やす企業も増えるとみられる。

 また節電対策という点では、商業施設やオフィスの照明を、省電力のLED照明に切り替える動きも加速するであろう。

【参考】
※IPPとは、一般事業者でありながら自前の発電所を持ち、電力会社へ電力の卸供給を行うことが認められた企業のことであり、具体的には新日本製鉄、神戸製鋼所、JFE、住友金属工業、太平洋セメント、住友大阪セメント、出光興産など主に鉄鋼・石油・化学といった業界各社が参入している。

※PPSは、1999年5月成立の改正電気事業法で新たに規定された電力会社以外の電力供給事業者のことであり、50kW以上の高圧需要家を市場としている。具体的にはダイヤモンドパワー、丸紅、新日鉄エンジニアリング、大王製紙、サニックス、JX日鉱日石エネルギー、エネサーブ、パナソニック、王子製紙、昭和シェル石油、日本風力開発、オリックス、日産自動車、コスモ石油などが参入している。

3.東電管内の家庭向け電気料金にも値上げの可能性

 東京電力は企業向けだけでなく、家庭向けの電気料金の値上げも視野に入れている模様だ。これは、原子力損害賠償支援機構が東京電力の実質国有化を柱とする総合特別事業計画のたたき台の中で、家庭向け電気料金を今年半ばまでに最大10%引上げる方針を打ち出したことからもうかがわれる。

 平成24年7月からは太陽光発電だけでなく、風力発電、中小水力発電、地熱発電、バイオマス発電も対象にした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」がスタートする。今後は一般家庭においても、再生可能ネルギーを利用した自家発電が一段と普及することになろう。

4.主な関連企業


【自家発電を支援する企業】

ウエストホールディングス 〜 機器の販売から施工メンテナンスまでを提供する太陽光発電システムインデグレーター国内大手。

大崎電気工業 〜 電力メーターの国内大手。再生可能エネルギーの普及に伴い次世代電力メーター(スマートメーター)への切り替えが進もう。

【IPPやPPSの火力発電所を支援する企業】

トーカロ 〜 石炭発電向けボイラーやLNG火力発電用タービンブレードの表面処理加工に強みを持つ。

【商業施設向けLED照明を支援する企業】

遠藤照明 〜 商業施設向けを中心とする照明器具の専業メーカー。業務用LED照明の大手で、製品の開発、品揃えの強化で他社に先行。オフィス用の直管型LED照明にも注力。

オーデリック 〜 住宅向けを中心とする照明器具メーカー。ダウンライトや防犯灯などの新製品を順次発表。

IDEC(アイデック) 〜 安全技術をベースにスイッチ、表示灯に強みを持つ制御機器専業メーカー。コンビニエンスストア向けなど商業施設向けLED照明事業を拡大中。

鈴木東陽(すずき・とうよう) 日本証券アナリスト協会検定会員。証券専門紙や経済誌、三洋経済研究所、いちよし経済研究所などを経て、現在、いちよし証券シニアアナリストとして、投資セミナーや経済講演などに従事。
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2012年1月25日  読売新聞)

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