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Fashion & The City 39

フランスの日本への支援

イヴ・サンローラン財団

 久しぶりに4月8日から13日まで仕事でパリを訪れた。いつ訪れても多くの日本人を見かけるパリだが、今回は震災直後ということもあって、ほとんど日本人を見かけることはなかった。

 パリでも話題は東日本大震災と福島第一原子力発電所のことがほとんど。先日、女優で歌手のジェーン・バーキンさんが日本を心配して、自費で来日し、コンサートを開いたが、フランス国内でも日本の被災者支援のために多くのチャリティー・イベントが開催され、予定もされている。

彫刻家ブールデルの美術館で開かれていたグレの展覧会

 パリ在住の日本人が中心になって開催されたチャリティー・イベントの一つに「KIBO ESPÉRANCE」がある。パリ在住の3名の日本人と3名のフランス人によって企画されたチャリティー抽選会だ。東日本大震災の義援金を集めるため、フランスの誇る有名100ブランドと10名のアーティストが協賛した。会場となったパリ6区のGalerie Aline Vidallでは、ルイ・ロデレール社によるシャンパンやロゼワインが、名門ホテル「ル・ムーリス」からはビュッフェが提供されるという豪華なもの。駐仏日本大使の秘書が謝辞を述べたあと、日本とフランスの強い絆について語り、終盤ではシャネルやランバン、ルイ・ヴィトンのバッグがオークションにかけられた。

 この夜の義援金は約4万5000ユーロ(約500万円)にのぼったという。ちなみに参加ブランドはシャネルルイ・ヴィトンクリスチャン・ディオール、ロレアル、ランバン、クリストフル、モンブラン、ルイ・ロデール、クロエ、ショーメ、アラン・デュカス、ジョルジオ・アルマーニ、レオナール、ル・ムーリス、プラザ・アテネ、クリヨン、リッツ、ブリストル、資生堂などなど。参加アーティストはフランスで、最も旬な写真家ベティナ・ランスを筆頭に有名アーティストが名を連ねた。

 4月30日には、デザイナーの高田賢三さんを中心とした大掛かりなチャリティー・イベントも予定されているという。フランスの日本への支援は、原子力発電所の問題解決だけでなく、大きな広がりをみせている。その中心的な役割は、やはり有名ブランドが多い。これまでのブランド・ビジネスの発展に、日本がいかに大きな存在だったかということの証しかもしれない。

 パリは初夏のような気候だったので、歩き回ることも苦にならず、ファッション関連の展覧会を二つ見た。一つはイヴ・サンローラン財団(写真左上)で開催されていた「イヴ・サンローラン プレタ・ポルテ展」。会場では生前のサンローランのインタヴュー映像が流され、50〜60点のイヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュの服が年代を追って展示されている。サファリ・ルックやピーコートなど、時代を感じさせないスタイルから、改めてサンローランの才能を感じ取ることができた。パリでも東京でも(東京ではドキュメンタリー映画「イヴ・サンローラン」が公開され、彼のパートナーだったピエール・ベルジェ著「イヴ・サンローランへの手紙」も発売中だ)今またイヴ・サンローランの魅力の再認識がはじまっているようだ。

 もう一つは、彫刻家ブールデルの美術館で開かれていたグレの展覧会(写真右上の3点)。1950年代を代表するデザイナーであるグレは、ドレープやプリーツを使い、彫刻のような完成度の高い作品で知られている。グレの歴史的な作品が、ブールデルの彫刻をバックに展示されている様は、まさにアート。来場者も多く、ファッションとアートが近い関係にあると感じさせてくれた。この展覧会はイヴ・サンローラン財団とパリ市が後援している。パリは行政も含めて、ファッションを大切にしているのがうかがわれ、とても羨ましかった。

田居克人(たい・かつと)さん

日本ファッションエディターズクラブ代表
中央公論新社 編集企画部部長
「エルジャポン」「マリ・クレール」などのファッション誌の編集を歴任。1999年よりファッション・メディアの責任者で構成される日本ファッション・エディターズ・クラブの代表。読売新聞社の発行する『YOMIURI STYLE MAGAZINE』の編集長も務めている。

2011年4月21日  読売新聞)

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