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みんなが幸せになれるファッション

「日本でも、もっとデザイナーや卸売業者の人たちと連携していきたい」とシプリアーニさん(新宿高島屋で/田中秀敏撮影)
カルミナ・カンプスのバッグ(ITC提供)

 「エシカル・ファッション」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「エシカル」とは倫理にかなったという意味で、つまり倫理的に正しく作られたファッションのことだ。

 具体的には、働く人たちの労働環境を考え、そして自然環境も破壊することなく作られていくファッションのことだ。欧米、特にヨーロッパを中心に、ここ数年、エシカル・ファッションが広がってきた。

 国連の機関である国際貿易センター(ITC、本部ジュネーブ)は、アフリカ諸国と国際的なブランドや卸売業者を結びつけた製品作りを広げようという活動を行っている。2008年から試験的にプログラムを始動させ、翌09年から本格スタートした。

 既にイギリスの有名デザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドさんや、イタリアのブランドであるカルミナ・カンプスも協業して、服やバッグなどを作っている。デザイナーのイラリア・ヴェントゥリーニ・フェンディさんのセンスとアフリカの人たちの手仕事がマッチしたすてきな製品だ。

 このプログラムはアフリカの女性たちとともに活動を行っている。責任者であるシモーヌ・シプリアーニさんは、その理由を「女性たちは地域を支えている。さらに女性の収入は男性より少ないのに、収入の80%は家族のために使われる。男性は18%なのにだ。女性たちの社会的地位が向上することは、貧困からの脱出にとても重要だ」と説明する。

手仕事で製品を作るアフリカの女性たち(ITC提供)

 ITCでは、高級ブランドや世界的なブランド、卸売業者などに呼びかけ、プロジェクトを進めている。使うのは、リサイクルの材料やオーガニックの素材。実際にシプリアーニさんらスタッフも現地に足を運び、生産グループの運営の指導などにまで関わって、自立や生活向上への足がかりを作っていく。

 消費者は魅力的商品を手にするのと同時に、アフリカの様子も知り、アフリカの人たちの生活向上にも役立てるということになる。

 このような製品は、ものが売れて、地元の人たちの経済的な自立が図れるという、循環システムが確立されなければならない。社会的正義感だけではシステムは循環しない。「おしゃれ」とか「楽しい」という消費者が買いたくなる要素がきちんと盛り込まれていなければならないのだ。

 「日本は市場が大きいだけでなく、品質に厳しい。そこで新たにデザイナーやブランドなどと組んで商品を作ることで、またこの活動が広がりを持つはず」とシプリアーニさんは話す。

 ファストファッションが世界中に広がり、消費者は流行の服が手頃な価格で買えるようになった。だが、こんな価格のものを、どこでどんな人たちが、どんな環境で作っているのかを考えると、不安になることがある。途上国であれどこであれ、ファッションは生活を向上させ、幸せになれるものであってほしい。だからこそ、ITCのような活動から生まれた製品に注目が集まってほしいと思う。

宮智 泉(みやち・いずみ)さん

読売新聞東京本社編集委員
東京生まれ。国際基督教大学卒業。1985年、読売新聞社に入社。水戸支局、地方部をへて、生活情報部。2009年1〜5月、カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院の講師を務める。同年6月より編集委員。ファッションやライフスタイル、働く女性の問題などを担当。

2011年11月18日  読売新聞)

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