Fashion & The City 51
さて、前回(2011年11月11日掲載)でも予告したが、イタリアのデザイナー、ロベルト・カヴァリ氏のお話。
カヴァリ氏は、その独自のスタイルと多くのハリウッド・セレブリティから支持されていることでも有名だ。ジャンニ・ベルサーチ亡き後、グラマラスでセクシーなスタイルと、また大胆な色使いとアニマル・プリントでミラノ・コレクションを代表するデザイナーの一人といえるだろう。今回のミラノ・コレクションを取材した際には、ロベルト・カヴァリグループのCEOである、ジャンルカ・ブロゼッティ氏にもお会いし、ランチをしながら話をうかがった。ブロゼッティ氏はLVMHやGUCCI(グッチ)グループ、ブルガリのトップまで務め、昨年、ロベルト・カヴァリグループのCEOに就任した。このブロゼッティ氏の経歴をみても、「ロベルト・カヴァリ」がいかに成功しているブランドか理解していただけるのではと思う。
デザイナー、ロベルト・カヴァリ氏のプロフィルを少しだけ紹介しよう。祖父が高名な画家であったということもあり、出身地フィレンツェの美術大学でプリント技術を勉強し、学生時代からその技術は高く評価されていた。また、革にプリントを施すという画期的な技術を開発し、1970年にパリコレクションにデビュー。それが、現在のブランドビジネスの発端になっている。
11月2日、ロベルト・カヴァリ氏がロベルト・カヴァリ青山店の公式オープニング・パーティーのために来日し、筆者のインタビューに応えてくれた。
「自分を育ててくれたのは、やはりフィレンツェという街。若い時は毎日のように美術館や博物館に通い、また職人たちの技術に感動した。2007年のメンズ・コレクション・ショーでは、あのフィレンツェの名所『ポンテ・ベッキオ』を会場として使用することを許されたことが、人生でもっとも素晴らしい時だった」とカヴァリ氏。グッチやフェラガモなど、フィレンツェを本拠とする有名ブランドは多い。ロベルト・カヴァリもフィレンツェの街によって育てられたトップブランドの一つなのだろう。
世界的なブランドに発展した現在でも、カヴァリ氏はファッションをアートとして捉えている。「自分自身の強い意志を持った、そして自分を魅力的に見せられる女性のために、ロベルト・カヴァリの服は存在する」と語る。また「内気でシャイな女性にも、自分の魅力を再発見するために着てほしい」とも。筆者の周りにもロベルト・カヴァリを着ることによって、本人がそれまで気がついていなかった新たな魅力を引き出された女性が、何人かいる。カヴァリ氏の服は、欧米の女性に比べればおとなしいと思われる日本女性の違った一面を引き出すのかもしれない。
カヴァリ氏のフェイスブックには世界中の女性たちから感謝のメッセージが届いているという。カヴァリ氏はこれらを女性たちからの愛のメッセージと捉えて、さらなる創作意欲をかき立てているという。
さらに大きな夢の実現にも取り組んでいる。今回、オープンした青山店は、アジア初の路面店ということもあり、内装はすべてイタリア本国から送られた材料を使用し、VIPルームも設けた
服は、人の気持ちを一新する魔法の力を持っている。ロベルト・カヴァリを着た、新しい日本女性でいっぱいのクラブ。そこに集う人は、新たな自分を発見した喜びに輝く、美しい女性たちにちがいない。
※前回は海外出張と、身内の不幸が重なりお休みを頂きました。ご容赦ください。
田居克人(たい・かつと)さん
日本ファッションエディターズクラブ代表
中央公論新社 編集企画部部長
「エルジャポン」「マリ・クレール」などのファッション誌の編集を歴任。1999年よりファッション・メディアの責任者で構成される日本ファッション・エディターズ・クラブの代表。読売新聞社の発行する『YOMIURI STYLE MAGAZINE』の編集長も務めている。
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