Fashion & The City 52
イスラエル大使館から「第1回テルアビブ ファッション・ウイーク」へのお誘いを受け、11月19日から24日までテルアビブへ赴いた。
イスラエルのテルアビブは、筆者にとって新聞やテレビでしかなじみのない都市ではあったが、そこで初のファッション・ウイークが開催されると聞いて、大いに興味が湧いた。
日本からテルアビブへの直行便はなく、オーストリア航空でいったんウィーンまで飛び、そこで乗り換えてテルアビブへ向かった。ウィーンの空港へ降りたのは初めてだ。4時間ほど乗り継ぎのための待ち時間があったので、空港のベンチに座り、ウィーン空港からの発着案内をながめた。サラエボ行きやワルシャワ行き、さらにはベオグラード行きなど、ほかの空港ではあまり見かけない地名が表示されていて、古くて小さな空港だが歴史を感じた。
テルアビブに到着したのは深夜の1時。待っていた観光省のお役人の案内で、優先的にイミグレーションへ。そこで、パスポートに入国スタンプを押してもいいかどうか聞かれた。イスラエルの入国スタンプが押されているパスポートでは、これからアラブ圏のいくつかの国には入国できないということらしい。イスラエルからのご招待でもあるので「押してかまいませんよ」と答えたのだが、入国審査官から「本当にいいのか?」と念を押された。さすがに緊張状態にある国に来たのだなと、こちらも身体全体に緊張感が走ってしまった。
到着した日の昼間は、海外からのゲストジャーナリストの通訳兼ガイドである女性に街を案内してもらった。テルアビブはイスラエルが建国されてからできた新しい街だ。イスラエルの経済、文化の中心地でもある。地中海に面しているため気候は温暖で、世界でもリゾート地として有名だ。11月というのにホテルの目の前のビーチでは泳いでいる人もいる。近代的な高層ビルもあるが、古くからの家屋もあり、街で人気のおしゃれな店が並ぶ「Neve Tzedek地区」は、古い家屋を改装したファッション関係のブティックやギャラリー、カフェが並び、エキゾチックだ。ゴールド細工のアクセサリーショップが多い。店の人たちもとてもフレンドリーで、会話をしてみると、彼女たちも初めてのファッション・ウイークに強い関心を抱いているのがわかる。
当日の夜は在テルアビブのイタリア大使公邸で「テルアビブ ファッション・ウイーク」のゲスト・デザイナーであるロベルト・カヴァリ氏を招いたパーティーが開かれた。観光大臣、テルアビブ市長、イスラエルの有力紙「イディオト・アハロノト」紙の社主など、多くのVIPが出席し、華やかなものとなった。CNN、イタリア版「ELLE」の編集者、アメリカ、中国のメディア、スウェーデンやノルウェー、フィンランドなど北欧諸国のファッション誌の編集者など、海外からも多くの取材陣が集まり遅くまで盛り上がった。
前回(2011年12月9日掲載)、このコラムで紹介したロベルト・カヴァリ氏とも、このパーティーで再会し、親しく話すことができた。「ロベルト・カヴァリ」は9月に開催された2012年春夏ミラノ・コレクションで発表したものをテルアビブで再現するという。どこまでも明るくフレンドリーなカヴァリ氏はパーティー会場の注目を一身に集めていた。
翌朝、「テルアビブ ファッション・ウイーク」の会場へ向かった。主催はイスラエル・テキスタイル・ファッション協会、およびビバリーヒルズ・ファッションウイークのプロデューサー。協賛企業はロレアル、エビアン、テルアビブ・ヤッフォ市、イスラエル観光省など。会場は、英国統治時代の列車駅(歴史的建造物)を改築した複合商業施設「The Station」にテントを設営したもの。テントの横に張り巡らされた金網の向こうには、機関銃や、戦車が並んでいる。テロへの警戒だろうか。ここでも少し緊張感が身体を走った。
さて、これからどんなコレクションショーが見られるのか……。この続きは次回に!
田居克人(たい・かつと)さん
日本ファッションエディターズクラブ代表
中央公論新社 編集企画部部長
「エルジャポン」「マリ・クレール」などのファッション誌の編集を歴任。1999年よりファッション・メディアの責任者で構成される日本ファッション・エディターズ・クラブの代表。読売新聞社の発行する『YOMIURI STYLE MAGAZINE』の編集長も務めている。
- 就職活動の「制服」 (2012年2月2日)
- Fashion & The City 54 (2012年1月30日)
- アメリカ大統領選とファッション (2012年1月19日)
- Fashion & The City 53 (2012年1月13日)
- 自分だけの品 (2012年1月5日)
- Fashion & The City 52 (2011年12月22日)
- ネット上のファッション美術館 (2011年12月15日)
- Fashion & The City 51 (2011年12月9日)
- ニット・ザ・シティ〜街を編もう〜 (2011年12月1日)
- みんなが幸せになれるファッション (2011年11月18日)
ピックアップ
トップ
|