若やぐ春のパリ

シャネル（ロイター）

　２０１２年春夏オートクチュール（高級注文服）コレクションが１月下旬、パリで開かれた。

　現地からの報道をインターネットなどで見ていて感じたのが、デザインの若々しさ。カジュアルな着こなしを取り入れたり素材に独自の加工を施したりして、ブランドの新しい表情を引き出した。

ヴェルサーチ（ロイター）

　シャネルは、行動的な現代女性が活躍する舞台として旅客機の機内に見立てた会場でショーを行った。目を引いたのが、ドレスやワンピースの腰部分の低い位置に付けられたポケット。両手を入れて歩けば、また上の浅いジーンズをはいているように見え、若々しい印象になった。

　ジャンポール・ゴルチエが優雅な黒いロングスカートに合わせたのは、スポーティーなスタジアム・ジャンパー。その組み合わせが新鮮だ。ヴァレンティノも、繊細なレースや花柄プリントのドレスで初々しい女性像を表現した。

　オートクチュールらしい手の込んだ服作りも健在だ。ジバンシィは、ワニ革を模様に沿って小片に切り取り、それを裏返して絹のドレスに縫いつけた。その作品を、鼻輪を付けたモデルが着ると、エキゾチックな雰囲気になる。

　ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェも、シャツ全体にスパンコールを縫いつけたり、布を複雑に重ねてケープにしたり、細部へのこだわりを見せた。ヴェルサーチも、ぴったりしたジャケットの肩に繊細な切れ込みを入れたりして、服の表情に変化を付けた。

　一時は衰退がささやかれたオートクチュールだが、中国など新興国の富裕層が新しい顧客となり、勢いを盛り返しているという。若者に人気のファストファッションと高級ブランドの協業も増えている。そうした事情が、オートクチュールの創作に影響しているのかもしれない。（生活情報部　塚原真美）