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陸自日誌

(9)「有事」のデマ 惑わされるな

◆4月6日(水)


 「有事」「戦場」には、デマが生まれる素地がたくさんあります。少し前ですが、3月31日、懸案の遺体搬送について、現地対策本部から「北沢防衛相が厚生労働相と会談し、以後、自衛隊ですべて対応することで合意した」との情報が入ってきました。夜のミーティング中のことです。

 作戦を担当する防衛部からは驚きの声が上がり、輸送統制所の担当者は真っ青に。すぐに翌日の輸送計画を見直すべきかどうか、判断を求めました。総監は不在でした。騒然となりましたが、日頃の大臣と総監のやりとりを知っている幕僚長が「それはあり得ない」と場をしずめ、輸送計画の見直しは不要と判断しました。

 調べてみると、全くのデマでした。そればかりか、逆のデマも流れていました。4月1日から、自衛隊は遺体の搬送を一切行わない、というものです。これも、自治体からの問い合わせに対し、防衛省の方で「現在、厚労省に対応を強くお願いしているが、3月31日に直ちに自衛隊が遺体搬送から手を引くわけではない」と返答したことが判明し、従来方針と変わらないことがわかりました。

 総監は日に1度、大臣と連絡を取っています。本日も福島駐屯地を視察中、「大臣に電話をしないとね」と、いそいそと部屋から出て行きました。デマが飛び交う「有事」の現場では、こうした上下の信頼関係が不可欠だと痛感しました。

◆4月8日(金)

 昨晩、震度6強の余震がありました。今までのところ、部隊は一部装備品に故障があるほかは、人員に大きな問題はありません。他方、隊舎は亀裂あり、沈下あり、かなりのダメージがあるようです。私の執務室は本棚が倒れました。仙台駐屯地は再び断水となっています。ご飯も缶飯に戻りそうです。総監は作戦棟で、「基本通り」机の下に潜りましたが、落ちてきたパイプがお尻を直撃しました。皆に笑顔が戻り、初動対処にあたりました。〈陸上自衛隊東北方面総監部の須藤彰政策補佐官の日誌から抜粋しています〉
(2011年6月4日読売新聞掲載)

 ◇須藤 彰(すどう・あきら) 1998年東大文卒。防衛庁(現防衛省)入庁、英ケンブリッジ大国際政治学部修士修了、運用支援課部員、陸上自衛隊東北方面総監部政策補佐官。東京都出身。

 【関連記事】被災地で自衛隊の人たちは何を食べていたのですか?

2011年6月24日  読売新聞)


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