今年は快適で活動的に
スポーティー、リバイバル、そしてカラフル――。今年の春夏シーズンの婦人服は、そんな言葉で形容される機会が増えそうだ。
景気の先行きが不透明な中、派手に着飾ることより、着ていて快適で評価の定まった意匠を求める消費者心理を反映しているようだ。
多くのブランドが、春夏コレクションでスポーツウエアを取り上げている。例えば、ライダースーツのように体の線にピッタリ沿った服を披露したのは、アレキサンダー・ワン。スポーツウエアに使われる伸縮性や通気性に優れた生地を使い、活動的な印象だ。
マーク・ジェイコブスやケンゾーも、トレーナーのような上着や、ジョギングスーツを思わせるフード付きジャケットとナイロンのパンツなどで、快活な女性像を表現した。こうした服に派手さはないが、場面を選ばず着られ、幅広い女性に受け入れられそうだ。
過去の流行を現代の視点で解釈し直した服も目立ちそうだ。昨年90周年を迎えたグッチは、ブランドが創立された1920年代に流行した低めのウエストラインのドレスや、アール・デコ調の幾何学模様のジャケットなどを発表。ドルチェ&ガッバーナも、襟ぐりが大きく開き、すそ部分のボリュームを強調したドレスで50年代の雰囲気を強調した。
こうしたリバイバルの動きについて、イタリア・ミラノ在住のファッションジャーナリストの矢島みゆきさんは、「価値観が大きく揺れる今、消費者は安定した気分にさせてくれる、見慣れたものの方を向くと、デザイナーは判断したのでしょう」と解説する。
そして、色。春夏らしいカラフルな新作の中で、特徴的なのが淡い色遣い。ラルフ・ローレンやG.V.G.V.は、ジャケットやパンツを薄いピンクや青に染め上げ、服の柔和な表情を引き立てる。
日本流行色協会で婦人服の調査をしている小木曽珠希さんは「多くのデザイナーが、着る人の気持ちを癒やす優しい色遣いを選択した」と話す。
多くのブランドが「安定志向」にかじを切り、過剰な装飾を抑えた現実的な服を提案した。いずれも着やすそうで美しい。しかし、ファッションは実用性を超え、「新しさ」も提案してきたはずだ。そう考えると、もの足りない気がするのは自分だけだろうか。(生活情報部 塚原真美)
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