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子ども
どう変わる? 幼保一体化

4)企業参入 期待と不安

保育の質保つ指標必要

 「今日のお天気は」。窓の外を指さして講師が英語で問いかける。「イッツ・サニー(晴れ)」と、子どもたちが元気に答えた。

 東京都千代田区の認可保育所「アスク二番町保育園」では、英語や体操などの講座を計週3回開く。同園を運営するのは、全国で72の認可保育所を運営している株式会社「日本保育サービス」(名古屋市)。同社の持ち株会社「JPホールディングス」(同)社長の山口洋さんは、「子どもの興味、関心を育み、保護者のニーズにも応えたい」と話す。

 保育所の入所待ちをする待機児童の解消策として、国は企業の参入に期待を寄せる。政府の検討会がまとめた「子ども・子育て新システム」では、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ「総合こども園」(仮称)を2015年度に創設し、運営に企業の参入を認める。

 認可保育所は公立や社会福祉法人の運営が大半だが、2000年に企業の参入が可能になった。だが、運営企業の経営悪化による撤退などを懸念し、参入を認めない自治体が多い。昨年4月時点で企業の認可保育所は全国で288か所、全体の1%にとどまる。

 新システムでは、株式会社を社会福祉法人などと同列に扱うよう自治体に促す方針。「門前払いされることが多かったが、参入しやすくなる」と山口さんらは期待する。

 待機児童問題が深刻な自治体では、すでに門戸開放が進んでいる。横浜市では、来年度開設する認可保育所の約半数にあたる26か所が企業の運営。同市は昨年4月の待機児童数が全国2位の971人。「保育所整備を迅速に進めるには、企業の参入は欠かせない」と市の担当者は話す。

 企業参入を認めてこなかった大阪市でも橋下徹市長の指示で1月、認める方向で検討を始めた。昨年4月の待機児童が1275人と全国最多の名古屋市も条件付きで企業参入を認め、保育所を増やす方針。

 企業側の動きも活発だ。「小学館集英社プロダクション」(東京)は今年4月、都内などに11の保育所を新設し、来春も同程度の開設を目指す。「ポピンズ」(同)も4月、7か所に保育所を開設する。

 その一方で、企業参入には否定的な見方も根強い。「保育士の人件費や給食の材料費など、保育の質がカットされないか」。大阪保育運動連絡会副会長の岩狭匡志(いわさただし)さんは心配する。都内や神奈川県には実際に企業の保育所が突然閉鎖されたケースがあり、「簡単に門戸を開けたくない」という自治体担当者もいる。

 こうした不安に応えようと、新システムでは、参入企業の経営状態をチェックし、補助金が他の事業に使われないよう企業の会計を区分することや、株主配当の制限を求める。保育・教育の経験がある役員などがいれば、新規参入の企業も認められる見通しだ。

 総合こども園は、就学前の教育機関として位置づけられる。「公教育への企業の参入には慎重に対応すべき。第三者評価の義務づけや、質を担保する指標作りが必要だ」。幼児教育に詳しい東京大教授の秋田喜代美さんは指摘している。(西堂路綾子、小坂佳子、内田淑子、矢子奈穂が担当しました)

2012年2月10日  読売新聞)

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