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週末マジシャン笑顔咲かせ35年

京王電鉄社員らボランティア公演1000回

京王マジッククラブのメンバー(左から関口さん、西山さん、高橋さん=京王電鉄広報部提供)

 京王電鉄(本社・多摩市)の社員ら3人で作る「京王マジッククラブ」が、老人ホームや学童クラブ、公民館などを訪ね、手品を披露するボランティア活動を35年間も続けている。平日は仕事に励み、週末限定のマジシャンとして、これまでに出向いた公演は1000回を数える。「喜ばれるのが何よりの励み」と、これからも見る人の笑顔のために続けていくつもりだ。(阿部新)

 「ちちんぷいぷい」。ミラクル関口こと関口和夫さん(62)がかけ声をかけると、ペットボトルの無色透明の水が一瞬で赤色に変わり、水玉模様のハンカチの中からは赤や黄色の花が次々と出てくる――。軽快な音楽に合わせて技が次々と繰り出された。「錯覚を幻覚のように見せて楽しませるのがマジックの魅力です」と楽しげに笑う。

 京王マジッククラブは関口さんが運転士だった1976年、社内に呼びかけて発足した。活動は主に土日・祝日で、多摩地区を中心に年間20〜30回の公演に出向いている。

 クラブ名には社名を冠しているが、会社公認というわけではなく、有志の集まりという位置づけ。だが「社員で知らない人はいないくらい」(中堅の男性社員)。現在のメンバーは関口さんのほか、ペッパ高橋こと高橋三俊さん(62)、アートマン西山こと西山豊さん(43)の2人。関口さんと高橋さんは2009年に定年を迎え、それぞれ第二の職場に勤務。西山さんは普段は経営企画部の課長の顔を持つ。

 もともとの趣味でもなく、「飽きっぽい性格」という関口さんがマジックに興味を持ったのは、たまたま立ち寄った百貨店で催しを見たのがきっかけ。「こんな事ができるんだと感心した」

 専門店に足を運んで助言をもらったり、勤務の空き時間を利用して練習したりするうちにのめり込んだ。「家族は半ばあきれ顔。今でも『お小遣いの範囲でやってね』と言われています」

 当初は半ば趣味での活動だったが、クラブ発足間もない頃、多摩市内の幼稚園でのお披露目が転機となった。「子どもたちがそれはそれは喜んでくれ、感動した」。人を喜ばせ、役に立てることにやりがいを感じると共に「目には見えない見返りをもらっているのは、私たちの方だと思いました」。

 口コミで評判は広まり、公演依頼は引きも切らない。少しずつ持ち種を増やし試行錯誤を繰り返しながら、見る人を喜ばせることに徹してきた。「種を数多く知っているだけではだめ。雰囲気を作り、お客さんを楽しませることが大事」。時には失敗もあり、「そういえば、野外公演の時に、仕込んだハトが飛んでいってしまったこともあったなあ」。

 公演は無償。「お代は要りませんって言ってます。1億も2億もあり余っているのであれば別ですが」と穏やかな笑顔の関口さん。マジックから引退する日は、まだまだ先になりそうだ。

     ◇

 次回のマジックショーは2月26日午前11時半からと午後2時からの2回、日野市百草の「京王百草園」(入園料が別途必要)で。出演依頼も含め、問い合わせは京王お客さまセンター((電)042・357・6161)へ。

2012年2月12日  読売新聞)
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