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当世受験事情

(5)専門高校 高まる進学率

坂部教諭(左奥)の数学の授業では、問題演習を重視する(1月17日、高松市の香川県立高松商業高校で)

 「これは数学3で習う公式だけど、前に教えたよ。覚えているかな」。1月17日、高松市の香川県立高松商業高校。情報数理科2年の教室で、数学2の積分を教えていた坂部雅則教諭(45)が、板書した公式を使って練習問題の別解を伝授する。数学2や数学3を扱うのは大学進学のためだ。

 商業科や英語実務科も設置する専門高校である同高で、情報数理科は創立110周年の2010年春、理工・医療・経済系の大学を目指すため新設された。数学や理科、情報など理系科目を重点的に学ぶ。2年生31人はその第1期生だ。

 同科2年の男子生徒(17)は「コンピューターのプログラミングの授業もあり、普通科の高校より充実している。大学の数学科に進んで、将来は数学教師になりたい」と夢を語る。授業は1月末から数学3に入り、来年の受験に向けて、ますます勉強が忙しくなりそうだという。

 1学年約200人が在籍する商業科にも、国公立大学を目指す「進学コース」と、私立大学を目指す「進学パターン」が設置されている。1969年開設の英語実務科(1学年約40人)も、得意の英語を生かして国公立大学を目標に学ぶ生徒が多い。

 11年春に卒業した306人のうち、5割にあたる157人が4年制大学に進学。国公立大学は、筑波大学や香川大学医学科などに34人、浪人を含めると43人が合格した。国公私立全体で、推薦・AO入試による合格は6割だが、道久和紀進路指導部長(52)は「生徒には一般入試に挑戦するよう呼びかけている」と話す。

 就職する生徒は2割にとどまる。谷岡由大教頭(55)は「就職を視野に入れた商業教育を大切にしながら、進学の増加という時代の流れに対応していきたい」と話す。

 通信制を除く専門高校の現役大学進学率は、商業科が00年の10・8%から10年の21・1%に倍増。工業科も11・4%から16・6%に増えた。大膳司(だいぜんつかさ)・広島大学高等教育研究開発センター教授(52)は、不況により高卒求人が減少していることや、学生減に悩む大学が、入試科目に「簿記・会計」を加えるなど、受験しやすい環境を整えていることが背景にあるとした上で、「普通教科の授業が少ない専門高校の卒業生は、大学に入ってから英語や数学の学力不足でつまずくことが少なくない」と指摘する。

 高校と大学の接続の問題が、ここでも浮き彫りにされている。(石塚公康、写真も)

 専門高校 農業、工業、商業、水産、看護、情報、福祉などの職業教育を主に行う高校。2011年5月現在、約65万人(通信制を除く)が学んでおり、全高校生の2割にあたる。以前は「職業高校」と呼ばれていたが、1995年に文部科学省が設置した調査研究会議の提言により、呼称の変更が進んだ。

2012年2月8日  読売新聞)
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